第9章 参謀の策略
「テメーもだ、ユウ」
「裏切り者がアタシに口出しすんな」
「いい加減にしろ!引き際がわかんねーオマエじゃねェだろうが‼︎」
「はぁ?引き際⁉︎アンタ何言ってンの、今は“勝負時”でしょうが‼︎」
アタシに引く気がないと態度で示したからか、場地は意地でもアタシの手を離さない。
アタシと場地が睨み合う横で、半間が「ダリィーなぁ」と呟いた。
「……もういい。場地、離してやれ」
「あ?」
「お姫サマには、部下二人連れてさっさと帰ってもらう。ここでヤリ合うのもそれはそれで面白ェが……オマエの言う通り、それはウチの本意じゃねェからな」
半間が引くというのが意外で、アタシはチラッと一虎を見た。
一虎は何も言わずに、ただアタシを睨み付けている。
「……アタシに引いて欲しいなら、一つ約束しなさいよ」
「あん?」
アタシはキッと半間を睨んで、怒りを抑えながらヤツに要求する。
「10月31日の決戦を迎えるまで、二度とウチの隊員に手ぇ出すな」
「約束だと?そんなん守ってやる義理ぁねェぞ!」
芭流覇羅の隊員の一人が、笑いながらアタシに突っかかって来た。
ドッ
アタシはそいつの顔面に拳を叩き込んで、地面に打ちつける。
「欲張んなクソ共。こちとら既に副隊長を一人ヤられてンだ……雑魚一人潰したって足んないんだよ」
ジロッと睨め付けるアタシの目に、芭流覇羅の隊員達は喉を鳴らした。
女相手に情けないヤツら。
ヒラッと、半間が片腕を上げる。
「オーケーだ。ハロウィンの決戦まで、芭流覇羅は東卍に一切手を出さねえと約束する」
「フン」
アタシは千冬の元に歩み寄り、腕を取って彼の体を背中に負った。
「……テメーら、お姫サマに道開けてやれ」
半間が呼びかけると、アタシ達を包囲してた芭流覇羅が左右に割れ、出入口までの道が開く。
「帰るよ、タケミっち」
「あ…は、はい」
アタシは歩き出し、タケミっちも後に続く。
「──ユウ」
最後に一虎が、アタシに向かってこう言った。
「久々のテメェの“晴れ姿”、楽しみにしてるワ」
「期待してなよ。飛び切りキメてってやるから」
振り向きはせずそう返して、アタシはタケミっちと共に芭流覇羅のアジトを後にした。