第9章 参謀の策略
「アンタが今言ったんじゃん。女が一人で来る場所じゃないって、アタシもそう思うよ!一人で来るなら、“保険”ぐらい用意しなきゃね」
パカッと携帯を開いて、アタシは画面を場地の眼前に突きつけた。
携帯に表示された画面を見て、場地の表情が変わる。
「!オイ、テメー──」
「ここに入る前に、ドラケンに電話した。『今から芭流覇羅のアジトに踏み入るから、30分経ってもアタシが連絡しなかったら突撃して』って」
「「「なっ!!?」」」
芭流覇羅の隊員達に、さっきより大きな響めきが広がる。
「東卍から突撃…⁉︎」
「あのマイキーやドラケンが、ここに来るのか⁉︎」
「ハッタリだろ…」
「本気だよ」
アタシは携帯をポッケに仕舞いながら、芭流覇羅の奴らに聴こえるように声を張った。
「このゲーセンに、火炎瓶を投げ込む」
「はぁッ⁉︎」
「か、火炎瓶⁉︎」
「ここは地下だからね、窓は無い。火から逃げるには客用と関係者用、2箇所の出入り口しかない。そこをマイキーとドラケンが二手に分かれた本隊を連れて張る。そして、這い出たアンタらを片っ端からブッ潰す」
アタシがペラペラと話す作戦内容に、芭流覇羅の奴らは明らかに動揺し、顔を青くしていく。
「ハッタリだと思うなら、勝手に思ってれば?……ところで、アタシがここに来て何分経ったっけ」
「ユウ!」
場地は焦った顔をしてる。
東卍を裏切ったクセに、何コレぐらいで動揺してンだか。
「ねぇ、一虎」
「!」
「1週間も先延ばしにする必要ないでしょ?今日この時、この場所を、決戦の地にしてあげるよ」
アタシはずっと黙ってる一虎を振り向き、彼に向かって強気に笑って見せた。
「東京卍會参謀・佑川和月。アタシの号令で、東卍の全部が動く」
「テメェ…‼︎」
ツカツカと、一虎がアタシに向かって来る。
拳が振り上げられるのを見て、アタシもカウンター狙いで構えた──
ヒュッ ガガッ
互いに向けた拳を、割り入って受け止めたのは場地だった。
「やめろ、テメーら」
「邪魔すんなよ、場地」
「ここでヤり合うのは、芭流覇羅の望むところでもねえハズだろ」
「!…チッ」
場地に諭され、一虎は舌を一つ打って場地の手を振り解く。