第9章 参謀の策略
「ハッ、東卍の参謀サマが無様なモンだな」
「!」
冷たく響いた場地の声に、アタシはピタッと手を止める。
一触即発な空気にもかかわらず、場地は堂々とアタシ達の方に近づいて来た。
アタシを、馬鹿にするように笑いながら。
「護衛も無しに一人で来たのが間違いだったな。参謀なんて持ち上げられても、テメーは結局女だもんなぁ」
「うるさいよ、裏切り者が」
何で、このタイミングで場地がアタシに話しかけてくんの?
「アンタが東卍の敵なら、アタシが誰と喧嘩しようが関係ないでしょ。しゃしゃり出てくんな」
「あ?」
場地がイラついたような顔をする。
……こいつが引かないなら、時間稼ぎに付き合ってもらおうかな。
「何で千冬だったの?」
「!」
「自分より弱い奴ボコるなんて、誰にでも出来る。芭流覇羅に本気を証明したかったなら、マイキーなりドラケンなり闇打ちすりゃ良かったでしょ」
再度ポッケに手を伸ばして、アタシは中の携帯に触れた。
「自分の下を騙して、ボコって、満足?アンタって、そんな小さい男だったっけ?」
「やけに挑発するじゃねぇか。そんなに殴られてぇか?」
ガシッと、場地がアタシの胸ぐらを掴んだ。
周囲から場地を囃し立てる、芭流覇羅の奴らの声の喧しさにアタシは眉根を寄せた。
「ソイツを選んだのは、呼びつけんのに一番楽だったからだ。オレが一声かけりゃ、バカみてーにノコノコ出てくんのはわかってたからな」
千冬をソイツ呼ばわりして、冷たい目で一瞥する。
「それで、このザマだ」
そう言ったところで、乱暴にアタシの胸ぐらから手を離した。
「わかったら、ソイツら連れてとっとと失せろ。ここは女が一人で来るようなトコじゃねえよ」
「…………」
アタシには、場地の心情が理解出来なかった。
千冬を殴った事も、彼の想いを馬鹿にする言葉も、全部腹が立ってしょうがない。
なのに、何で──……
「圭介──」
いや、今考えるべきはこの状況を打破する事。
千冬もタケミっちも、これ以上傷付けさせない……アタシは絶対に、仲間を連れてここを出る。
「──アタシが、何の策も無しにここに来たと思ってンの?」
「!」
「策……?」