第9章 参謀の策略
その上でアタシを……という事は、狙いは参謀(アタシ)じゃなくて、その先にいる総長(マイキー)。
頭に血が昇って忘れかけてたけど、8・3抗争の時だって半間の狙いはマイキーだった。
「さぁ、どうする?東卍のお姫サマは──」
バシッ
「アンタがそれを望むなら、条件を変える」
「あン?」
アタシは、掴まれた腕を半ば叩くように振り解いて、半間に答えを出した。
「東卍の壱番隊隊長から裏切り者に成り下がった場地に、アタシと釣り合う価値があると思う?……都合良く、ここには裏切り者が“もう一人”居るワケだしね」
チラッと、アタシは場地達の方に目を向ける。
「!」
アタシの言う事がわかったのか、ハッとしたように場地が表情を変えた。
「東卍の参謀が欲しいなら、芭流覇羅のNo.3──羽宮一虎を、マイキーの前に差し出してもらおうか」
「!」
アタシの言葉で、今度は半間と一虎の表情が変わった。
「あーー……」
半間は、上を仰ぎながら間延びした声を出す……どうやら、アタシが言った事は想定外だったみたい。
ジロッと、半間の目が再度アタシに向いた。
「……どこまでも、思い通りにならねぇ女だなぁ」
「そりゃどーも。こう見えて、男をイラつかせンのは大得意なんだよ」
珍しくイラついた目をした半間だけど、すぐにまた愉しげに目を細める。
「なら、力尽くでヤッちまうか!」
「!」
半間の一言で、ザワッとこの場の空気が変わった。
アタシは数歩後退して、千冬とタケミっちの元に戻る。
「イイっスねぇ半間さん‼︎」
「待ってました‼︎」
芭流覇羅の隊員達が、アタシ達を囲い込む。
(や、ヤバい!)
「結局こうするなら、下手な駆け引きなんて仕掛けないでくれる?」
タケミっちが動き出さないよう、庇うようにして制しながら、周囲に視線を走らせた。
正直さっきまでが予想外で、今のコレは予想通りの展開。
アタシは、ここに来る前に立てた作戦をもう一度頭の中に思い浮かべた。
本当はもう少し時間稼ぎたかったけど……
「手負い一人、雑魚一人に女一人だ。どう足掻いても勝ち目はねーよ」
ニヤニヤと笑う半間の目を、アタシはキッと見返す。
そして、自分のポッケに手を伸ばした。