第9章 参謀の策略
アタシは薄く笑いながら、半間に答える。
「アンタ、何か勘違いしてない?アタシは、場地を拉致られた仲間として助け出したいワケじゃあない……東卍の裏切り者として、制裁加えるために連行したいんだよ」
「へぇ?」
「総長の目の前で、幹部総動員でタコ殴りにした後、そちらにお返しするつもり」
アタシの答えに半間は驚き目を丸くしたかと思うと、数秒後に腹を抱えて笑いだした。
「ヒャハハハハ‼︎なるほどねぇ、そう来るか!」
耳障りな笑声にアタシは顔を顰める。
「場地はもう仲間じゃねえっつうんだな⁉︎東卍のお姫サマは随分冷てえじゃねーか」
「東卍は、裏切り者には容赦しない……場地にも鉄槌下さなきゃ、アタシの気が済まない。だから連れてく」
「ヒャハ♡面白ェ〜……けど、ダメだ」
弾んだ声から少しトーンを下げて、半間はアタシの要求を拒否した。
アタシの後ろで、タケミっちはゴクリと唾を飲み込む。
「オレは仲間想いだからなぁ。いくらお姫サマの頼みでも、敵チームに場地(ナカマ)は渡せねー」
何が仲間想いだクソヤロー……アンタは、幹部でありながら愛美愛主を切り捨てた男だろーが!
って言いたかったけど、アタシは言葉を飲み込んで心の中で詰った。
「──“タダ”じゃ、な」
「は?」
ガシッ
「!」
半間の長い腕が、アタシの腕を掴み、グッと自身に引き寄せる。
大きな手のひらの冷たさに怖気が立ったけど、アタシはまだ暴れる時じゃないと逃げたい気持ちを抑え込んだ。
「オマエが芭流覇羅に残れよ、お姫サマ」
「何言って……」
「ユウさん…‼︎」
「タケミっちは退がってて!」
前に出て来ようとしたタケミっちに一喝して、アタシは目の前の半間をキッと睨み付ける。
「条件突き付けようってワケ?」
「人質交換みてーなモンだ。お姫サマがここに残んなら、場地は一旦東卍に返してやるよ」
対等な条件出してやってる風に言って、アタシを挑発してンの?
……いや、違う。
東卍がいかに仲間を大事にしてるか、東卍と愛美愛主の抗争から半間だって知ってるハズ……
場地を渡す代わりに千冬かタケミっちを人質に取ると言われた方が、アタシは困った。