第9章 参謀の策略
耳に響いてくる声は、半間のものじゃなかった。
「マイキー、一虎、オレ……あの日、オレらは決別した」
この声は、圭介の……
(マイキー君の兄貴が死んだのは、この二人が原因だったんだ!!!)
「一虎が庇ってくれたから、オレは年少に入らずに済んだ。オレは、一虎が出所するのを待ってたんだ」
(場地君は、そもそも一虎君側の人ってことか…?別に勢いで東卍を脱退したワケじゃないんだ)
昨日アタシが向けられたのと同じような場地のセリフを聞いて……
場地が“あの日”の話をしたのだと知って、胸にズキリとした痛みが走った。
アタシはギリと奥歯を噛んで、足を進める。
(だったら、連れ戻すなんて、無理じゃん)
タケミっちは……怪我はしてないみたいだけど。
「いいね、場地。そういう事ならマジで大歓迎だ」
愉快そうな半間の声が、余計にアタシを苛立たせた。
半間が、場地に向かって何かを投げ渡す。
ヒラリと舞って場地の手に渡ったのは、白いMA-1……半間も一虎も、この場にいる隊員全員が着てるのと同じもの。
「ホレ、これが芭流覇羅の“特攻服(トップク)”だ」
場地は東卍の特攻服の上から、その上着に袖を通した。
「花垣‼︎マイキーに伝えろ‼︎」
半間に呼ばれて、タケミっちの肩が跳ねる。
半間の言葉に続くように、一虎がタケミっちへこう宣言した。
「1週間後の10月31日。廃車場にて、芭流覇羅VS.東卍──決戦だ‼︎」
「………」
アタシには我慢の限界だった。
散々好き勝手しておいて、何が今更決戦だ……
「ねぇ、そこ通してくれる?」
「あン?」
「なっ⁉︎女がどこから入りやがった‼︎」
アタシが声をかけると、芭流覇羅の隊員達は弾かれたように振り返って驚愕する。
にしても、アタシが真後ろに立っても気付きもしないなんて、警戒心無さすぎね。
一瞬でザワつきだした隊員の群れを、中心に居る半間達は怪訝そうに見てる。
「ちょっと待て、この女……」
「まさか、東卍の…⁉︎」
誰かがそう口にしたところで、この場のヤツらはアタシが東卍の参謀だと気付いたようだった。
アタシが睨むと、隊員達は後ろの半間達にチラチラと目を向けながら、アタシの前から退いていく。