第9章 参謀の策略
「敦くんが連絡してくれて良かった。ありがとね」
《は、はい》
「後はアタシが何とかする。タケミっちもちゃんと連れ戻すから、心配しないで」
敦くんとの通話を切ると、アタシは携帯を握ったまま踵を返して走り出した。
タケミっちが連れてかれた、芭流覇羅のアジトを探さなきゃいけない。
前にアタシが調べた拠点は、ヤツらは既に捨てたらしく今は使われてないから……
「芭流覇羅のヤツらが目撃されてる場所……」
東卍の隊員から集めた情報と、この辺りの地図を頭の中に思い浮かべる。
「溝中から徒歩で行ける距離……不良が溜まるのに最適な場所……」
一虎にもだけど、無謀なタケミっちにも腹が立った。
「タケミっちめ……覚悟してなさいよ」
連れ戻したらキツめに説教してやる。
◇◆◇◆
アタシが探し当てたのは、潰れて寂れたゲームセンター。
溝中からそれほど遠くないトコにあって、最近不良がよく溜まってると噂されてる場所、そして……
アタシは、ゲーセンの出入り口横に落書きされてる〝首のない天使〟の絵を見つめた。
総長が存在しない暴走族の象徴……芭流覇羅のシンボルマーク。
「絶っ対ここだ」
このゲーセンにタケミっちが居ると確信して、アタシは「ふぅー」と一つ溜息をついた。
見張りは立ててないみたいだけど、このまま突撃して大丈夫かな……
タケミっちの事も心配だし、さっさと中入って確認したい所だけど……
「………」
少し考えて、アタシは突撃する前に携帯を取り出して電話をかけることにした。
数コールで、“相手”は電話に出てくれた。
《……ユウか、何の用だ?》
「ちょっと、お願いしたい事があるんだけど──」
◇◆◇◆
携帯をポッケにしまって、アタシはガラスの破られたゲーセンの入口を潜った。
短い階段を下って、芭流覇羅のヤツらが集まってるフロアに足を踏み入れる。
こんなに不良が集まってるにしては、やけに静か……その異様な雰囲気に、アタシは眉根を寄せた。
芭流覇羅の隊員達はみんなが中心を囲うようにして立っていて、騒がず口を閉じてる。
アタシは息を殺しながら、その集団に近づいた。
隊員達の間を縫うように視線を通し、ヤツらが囲う中心を見れば、まず目に付いたのは半間のノッポ頭。