第8章 不審の隊長
武蔵神社からそれぞれ帰路について、アタシは自分の家までマイキーに送って貰った。
マイキーが「和月ん家泊まる」と言い出して、アタシは「いいよ」と答えた。
家は近いとはいえ、さすがに時間も時間だから。
特攻服から寝巻に着替えて、2人でベッドの上に寝転ぶ。
アタシはマイキーに「おやすみ」と伝えて、マイキーに背を向けた体勢で目を閉じた。
目を閉じていても、中々眠れそうにない。
「………」
場地の裏切り、一虎の危険性、バルハラの脅威……
色んな事が頭の中をグルグルと回ってる。
圭介と、頭の中で名前を呼んで、アタシは手元のシーツを掴んだ。
向けられた敵意を、信じたくない。
冷たく放たれた言葉を、許せない。
それでも、アイツの事を……仲間と信じたい。
「………」
「──和月」
「っ⁉︎」
マイキーに呼ばれて、アタシの肩がビクッと跳ねる。
ビックリしたぁ……もう寝たと思ってたのに。
「和月、こっち向いて」
「……何で」
「いーから」
グイッ
「わっ」
視界にマイキーの手が伸びてきだと思えば、アタシは無理矢理体を反転させられる。
「もー、眠いから寝かせてよ」
「眠そうに見えねーけど?」
そう言ったマイキーは、不機嫌そうな顔してる。
アタシの上に馬乗りになって、じっとこちらを見下ろして来た。
「和月、ずっと場地の事考えてただろ」
ギクッ
「……えーっと……」
肯定したら怒らせてしまう問いに、どう答えたらいいか考える。
けどマイキーは答えを待たずに、体を前に傾けながらアタシへ手を伸ばしてくる。
両手で頬を挟んで、マイキーはアタシの顔を自分に向けさせた。
アタシは文句を言おうとしたけど、言葉は出なかった。
目が合ったマイキーの、黒い瞳の強い眼差しに、息を飲んでしまったから。
「和月は、オレの事だけ考えてりゃいい」
「………」
「……って、言っても無理なのは、オレだってわかってる」
「え……」