第8章 不審の隊長
こちらへ歩いて来る三ツ谷に、アタシは首を傾げて何で居るのか聞く。
「三ツ谷帰ったんじゃなかったの?」
「いや…途中で引き返した」
「何で?」
「あ〜……だから、トイレ探してたんだよ」
うっそつけ!ってツッコミたかったけど、アタシはそれは口にしないでおいた。
三ツ谷のことだから、きっとマイキーを心配して戻って来たんだろうと、簡単に想像がついたから。
「そうだ、ちょうどいいや」
じーっと三ツ谷を見つめてたマイキーが、今思いついたように三ツ谷に言う。
「三ツ谷、弍番隊(オマエんトコ)にタケミっち入れる事にした」
「え⁉︎」
「は⁉︎」
顔を引き攣らせる三ツ谷に、驚きマイキーを見るタケミっち。
二人の反応は気にもせず、マイキーはニッと笑っていた。
「タケミっち、今日から正式に東卍のメンバーだ。ヨロシクな♡」
「……」
タケミっちは、嬉しそうな顔をして三ツ谷へ頭を下げる。
「よろしくお願いしゃーす」
「なんで盗み聞きなんてしちまったんだろう…」
なんて三ツ谷は呟いたけど、どっちにしろタケミっちは弐番隊に入れてたと思う(アタシが)
タケミっちを東卍に入れると、最初にマイキーから聞いたのは、愛美愛主との抗争の頃だったっけ……
あれから2ヶ月半、今更って感じが否めない。
「タケミっち」
「?はい」
「東卍に入るからには、容赦しないからね」
アタシが肩を叩きながら言うと、タケミっちは「うっ」と顔を青くした。
「が、頑張りマス!」
「ん、改めてよろしく」
タケミっちが東卍の隊員になった以上、マイキーの“頼み事”は“総長命令”と同じ……
総長直々に下された命令に、参謀のアタシがこれ以上口出しする事はできない。
散々反対したけど、アタシも最後には受け入れて、タケミっちに向き直った。
「圭介の事……お願いね」
「任せて下さい」
タケミっちは、ニッと笑って自分の胸をドンと叩く。
それはもしかしたら、自分の不安を振り払う為だったかもしれないけど……
今日のタケミっちは、アタシには何故か頼もしく見えた。