第8章 不審の隊長
マイキーは、少しだけ寂しそうな顔をした。
「オマエは、東卍の参謀だから」
「……マイキー」
マイキーは、手を頬に滑らせながら下へおろして、アタシの手をギュッと握る。
「ホントは凄えヤだけど、“参謀として”なら、オレ以外の男の事考えてても許してやる。……ホントはヤだけど」
2回言った。
「でも、目はオレを見てて」
マイキーは、今度はアタシの手を自分の頬に引き寄せる。
スリ…と頬擦りして──愛しそうに微笑んだ。
マイキーがよくやる甘えた仕草、今まで何度も見て来たのに……今のアタシは、自分の頬が熱くなるのを感じた。
こんな程度で照れるとか……!
「和月の目でオレを見つめて、和月の手でオレに触って」
「っ、マイキー……!」
「“マイキー”じゃねえ。2人きりの時は」
「……総長と参謀として話してたんじゃなかったの?」
アタシが聞くと、マイキーはパチと目を瞬かせて、ニッと悪戯っ子のように笑う。
アタシの耳元に口を寄せて、こう囁いた。
「ベッドの上に居んのに?」
「う……」
身も蓋もない言葉に、アタシはまた照れさせられる。
「他のやつの事考えててもいーから、オマエはオレのそばに居んの」
「……誕生日に、約束したみたいに?」
「そ。じゃねーと許さねー」
マイキーはアタシの上から退くと、またゴロンと寝転がった。
「………」
「ん?」
「いや、何もしないんだと思って……」
「シて欲しかった?」
「まさか!明日学校行けなくなったら困るし」
慌てるアタシを見て、マイキーは「ハハハッ!」とおかしそうに笑った。
「あ、でも背中向けんのはナシな。こっち向いて寝ろよ」
「はいはい」
「……早く寝ねーとキスしてそのまんま抱く」
「おやすみ!」
余計に近づいて来たマイキーの顔を押し返して、アタシは今度こそ寝ようと目を閉じた。
変にドキドキさせられたからか、今は落ち着いていて……アタシは、ゆっくりと眠りに落ちる事が出来た。