第8章 不審の隊長
イラつき怒鳴るアタシに、マイキーは宥めるように笑う。
「そんな怒んなって、和月。オレの頼み聞いてもらうのに、タケミっちに何もナシじゃ悪ぃーじゃん」
「っ…そもそも!アンタの頼み事だって、タケミっちに出来るワケ──」
「和月は、場地に戻って来て欲しくねーの?」
「!」
マイキーの言い方に、アタシは腹が立った。
でも何故か、言葉が出なかった。
いつものアタシなら「話をすり替えるな」って怒鳴るとこなのに……
「……圭介……」
頭の中に場地の顔が浮かぶ。
さっきの別れ際の、冷たい顔じゃなくて……不敵に笑う隊長の顔、無邪気に笑う親友の顔。
「じゃータケミっち、約束な」
マイキーはアタシの横を抜けて、タケミっちの前に立った。
アタシは、止めるのも疲れてしまって、話を進めるマイキーに目を向けるだけ。
「近いうちに芭流覇羅とぶつかる。それまでに、オマエが場地を連れ戻せ……オマエが稀咲より役に立つ奴だと証明しろ」
タケミっちが、ゴクと唾を飲む。
「稀咲がヤベー奴なのは、オレも和月もわかってる。同時に稀咲の“力”も認めている。東卍のこの先に、稀咲の“力”は必要だ。オレに貢献しろ、タケミっち」
マイキーは鋭い瞳をタケミっちに向けた。
「オレに交換条件を出したんだ。失敗したら──殺す」
「‼︎」
静かに告げられた「殺す」という言葉に、タケミっちは目を見開き息を呑む。
アタシは、それを見て溜息を吐き肩を落とした。
「三ツ谷‼︎」
「え?三ツ谷?」
突然三ツ谷の名を呼んだマイキーに、アタシは目を向け首を傾げる。
マイキーは、神社の林の方に顔を向けてた。
「さっきから何盗み聞きしてんだ?」
え、ホントに三ツ谷が居るの?
「出てこい。オマエの銀髪がチラチラ見えてんだよ!」
「……」
マイキーが呼びかけると、樹木の陰からひょっこりと三ツ谷が顔を出す。
「いやー、バレたかー。ちょっとトイレ探してたら話し声が聞こえて」
見え透いた言い訳をしながら、三ツ谷は少し気まずそうに笑った。
「三ツ谷君…」