第8章 不審の隊長
「「……え⁉︎」」
タケミっちとアタシの声が重なった。
アタシは、また驚愕するままマイキーへ目を向ける。
「いいの⁉︎」
「うん」
「でも、ユウさんは…」
「オレが良いって言ったら、和月は納得するからいーんだよ」
「!」
──ふっざけんな‼︎
「マイキー‼︎」
アタシは、ガシッとマイキーの胸ぐらを掴んで目一杯揺さぶった。
「うわっ、何すんだ!」
「こっちのセリフ‼︎アンタ何勝手な事言ってンの⁉︎」
「あ?別にいーだろ」
「良くない‼︎」
マイキーがタケミっちの頼み事に頷いたのは、アタシに対する侮辱だ。
「稀咲の事はもう散々話し合ったでしょ⁉︎圭介怒らせてまで、稀咲を東卍の隊長にしたのは、芭流覇羅に勝つ為‼︎」
(ユウさんが稀咲を引き入れたって……芭流覇羅との抗争が原因だったのか)
「芭流覇羅に勝って!半間を潰して!カズ──」
「和月‼︎」
マイキーに呼ばれて、アタシはハッと口を閉じる。
「?」
タケミっちには、一虎の事は芭流覇羅の幹部としか伝えてない……今ここで話すのは憚られた。
「……とにかく!アタシがやって来た事を、アンタが否定するようなマネしないで!」
後ろから、「ユウさん…」と呟くタケミっちの声が聞こえた。
「………」
別にアタシは、稀咲を庇いたくて言ってるんじゃない。
稀咲を信用ならないと思う気持ちもあるし、疑心だってある。
それでも……
「不良にだって、通すべきスジがあるんだよ。マイキーが稀咲と握手した時点で、稀咲は東卍の仲間!理由もなく除名なんて、仲間に対する裏切り!」
アタシはマイキーから手を離して、ジッと黒い瞳を見つめた。
「アンタは、そんな事するような男じゃないでしょ」
「………」
マイキーがアタシに答えるより先に、後ろのタケミっちが口を挟む。
「稀咲が何かしてからじゃ遅いんです!」
アタシはタケミっちを振り返って、今度はタケミっちの目を見つめた。
「アイツは危険な奴なんです…‼︎」
「あーもう!何度言わせりゃ気が済むの⁉︎」