第8章 不審の隊長
「でも……1コだけ、オレからも頼み事していいっスか?」
「ん?何?」
「……」
ゴクと、タケミっちは生唾を飲み込む。
真剣な顔……仇でも睨んだような顔をして、こう言った。
「稀咲を…稀咲を東卍から外してください!」
タケミっちの“頼み事”に、マイキーもアタシも眉根を寄せる。
「あ?」
「なんで、あんな奴東卍に入れたんスか⁉︎理由は説明できないんスけど、アイツはヤバイんです‼︎アイツは…稀咲は…この先絶対、東卍をダメにしますよ‼︎」
タケミっちは必死に訴えてるけど、並べられる言葉はどれも曖昧なものばかり……簡単に聞き入れる事はできない。
「稀咲が、元・愛美愛主だから気に入らないの?」
こればかりは参謀として無視できず、アタシは口を挟んだ。
「違うんです!そういうんじゃなくて……」
「じゃあ何で?」
「そ、それは……上手く説明出来ないんスけど……」
「話せる理由も無いのに、どうして稀咲を東卍から外せなんて言えんの?」
アタシは溜息をつきながら、立ち上がってタケミっちの正面に立った。
タケミっちの緊張した表情が、アタシを見上げる。
「稀咲は、アタシが引き入れた」
「!え…⁉︎」
「稀咲を辞めさせたいなら、アタシを納得させて」
キッと、タケミっちの目を見据える。
(どう説明しても、ユウさんを納得させるなんて無理だ……どうする⁉︎)
タケミっちは、言葉を詰まらせて、視線を外し俯いてしまった。
(これじゃ、愛美愛主との抗争を止めようとした時と変わらない。オレが何言ったって、ユウさんにとっては“根拠のない感情論”……)
タケミっちは何も言わない……どうして言えないのか、わかんないけど……
(クソ……一体どうすりゃいいんだ⁉︎)
あるかもわからない理由に拘ってられるほど、今の東卍に余裕はない……
「タケミっち……悪いけど──」
「和月」
グッと、後ろからマイキーがアタシの手を引いた。
「ん?」
アタシが後ろを見ると、マイキーはスクと立ち上がってタケミっちの方を見る。
「タケミっち」
「は、はい…」
「いいよ」