第8章 不審の隊長
「………」
話を聴きながらアタシは、さっきマイキーがしてたように夜空の月を見上げる。
こんな日に限って、綺麗な満月だった。
「二人に殴られたんスけど…どっちスか?」
「壱番隊隊長・場地圭介……何考えてっかわかんねーだろ?アイツ」
「はい…なんで殴られたのかもわかんないっス」
頷くタケミっちに、マイキーは「ハハ」と楽しそうに笑う。
「昔っからそーなんだよ。眠いってだけですれ違った奴殴るし、ハラ減ったら車にガソリン撒いて火ぃつけちゃうし」
あったねぇ、そんな事。
「へ…へー(『わかんねー』レベルを遥かに超えてます!)」
マイキーとは違うタイプのワガママというか、言い方や目的が違うだけでムチャクチャっぷりはマイキーとそう変わらない……
場地圭介とは、そんな男だった。
「とにかくあんな奴でさ、東卍の“創設メンバー”なんだ」
「創設…メンバー…」
アタシは、チラッとマイキーの横顔を見る。
まさかマイキー、タケミっちに一虎との因縁まで話すつもりじゃ……
「東卍はさ、中1の時オレとケンチン、和月、三ツ谷、パーちん、場地……」
そこまで話したところで、マイキーは言葉を止めた。
マイキーの様子を見ながら、タケミっちは「その6人で…?」とマイキーに聞く。
「………ああ。コイツらが集まって、旗揚げしたチームなんだ」
「………」
タケミっちに向けたマイキーの答えに、アタシは内心ホッとした……のも束の間
「タケミっち、場地を“芭流覇羅”から連れ戻してくれ」
「⁉︎」
マイキーの“頼み事”に驚愕して、バッとマイキーを見た。
「オレ、アイツの事大好きなんだ。頼まれてくれるか?」
「ちょっと、マイ──」
「ハイ‼︎マイキー君の頼みならもちろん!」
アタシが止める間もなく、タケミっちは引き受けてしまった。
「マイキー何考えてんの⁉︎タケミっちに、そんな事出来るワケないじゃん!」
「え。」
「大丈夫!タケミっちならやってくれるって絶対」
マイキーが笑顔でタケミっちに「なっ?」と聞くと、タケミっちは「ハイ!」と元気良く答えた。
ホントに何考えてんの⁉︎