第8章 不審の隊長
(稀咲が参番隊隊長…ナオトには東卍のトップとか言ったけど、もう無理かな…)
ザッ ザッ
「ん?」
アタシ達の足音に気付いたのか、タケミっちの視線がこちらを向いた。
「気付いた?」
「マ……マイキー君⁉︎え⁉︎」
「いつまでも寝てないで、起き上がったら?」
「ユウさん⁉︎」
タケミっちはガバッと起き上がって、マイキーとアタシの顔を交互に見る。
(なんでマイキー君達が……???)
マイキーは石段に上って行き、タケミっちより一つ上の段に腰を下ろした。
「タケミっち。稀咲…気に入らない?」
「え⁉︎いやっ…その…」
思いっきり殴ったクセに今更何慌ててんだか……
アタシはタケミっちの様子に呆れたけど、マイキーの話を邪魔する気はないから口には出さない。
静かに、マイキーの隣に行って腰を下ろした。
「……組織をデカくするのはしんどいね。新しい風入れたら、出て行っちゃう奴もいる」
夜空の月を見上げながら話す、マイキーの横顔は寂しげで、アタシは前を見つめながらそっと視線を落とした。
タケミっちは、さっきの集会での事を思い出したのか「あ…」と呟く。
「夢への道は遠いな」
「マイキー君…」
「頼みがあるんだ、タケミっち」
「?」
意外な言葉に、アタシは視線を戻してマイキーの横顔を見つめる。
マイキーがタケミっちに頼み事?……一体何を?
マイキーは、月からタケミっちへ視線を戻す。
「オレ、幼馴染がいてさ」
「……はい…」
「一人は和月な」
ニッと笑ってこっちを見るマイキーに、アタシは返事の代わりにヒラヒラと手を振っておいた。
今はアタシの事なんてどーでも良いでしょ、と。
「もう一人の奴は、ただ家が近所ってだけで、別に仲良くはなかった」
(マイキー君と幼馴染…ヤベー奴なんだろーなー)
「しょっちゅう喧嘩ふっかけて来てさ。その度ボコボコにしてやった」
マイキーの話に、タケミっちは顔青くしながら苦笑した。
「……マイキー君に何度も喧嘩売るなんて…とんだおバカさん」
「うん。それが、さっきオマエの事殴った奴」