第8章 不審の隊長
アタシからも腕を回して、マイキーを抱き締める。
冷えていた心に、温もりが溶けていくような感覚がした。
一頻りギューッと抱き締めたら、アタシは落ち着いて、マイキーから体を離す。
いや、離そうとした…マイキーはアタシから離れようとしなかったけど。
「…ところで、何でアンタはずっとここに居たの?」
「オマエが戻って来んのと……タケミっちが起きんの待ってたから」
アタシは、石段の上で眠ってるタケミっちに目を向けた。
「……そもそも、何でタケミっちはあんなトコで寝てンの?」
「稀咲が、タケミっち殴って気絶させた」
「稀咲が?」
マイキーが言うには、アタシが飛び出してった後、稀咲がタケミっちの顔面を殴って気絶させたらしい。
場地に殴られた後で散々だな、とは思うけど…同情はしない。
そもそもタケミっちが先に稀咲を殴ったワケだから、自業自得でしかないし。
アタシは、マイキーの肩に上着をかけ直しながら、やれやれと溜息をつく。
「タケミっちはともかく、アタシは直接家に帰ってたかもしれないのに」
「戻って来たじゃん」
「なんとなく、アンタは神社に居るような気がしたからね」
「オレら通じ合ってんな♡」
嬉しそうな顔するマイキーにまた溜息をついて、アタシはもう一度体を離そうとマイキーの肩に手を置いた。
「マイキー、放して」
「絶対ヤダ」
「何でよ!」
「和月が悪ぃーんだろ!勝手に離れてった分ギューギューするまで絶っ対ぇ離れねーかんな!」
意味わかんない理論で、マイキーは腕の力を強めてくる。
ギャーギャー騒いでると、そのうち視界の端にあった金髪がピクッと揺れるのが見えた。
「ん…夜?」
「あ!ほらマイキー、タケミっち起きたよ」
アタシがタケミっちの方を指差して、「タケミっちになんか用あるんでしょ?」と言うと、マイキーは渋々アタシを解放した。
マイキーが、タケミっちの方に向かってく。
アタシも、その後に続いた。
(そっか…オレ、稀咲に殴られて、気ィ失ってたんだ…なんで手ぇ出しちまったんだろ)
タケミっちは目ぇ覚ましたみたいだけど、「痛ってー」と呟いただけで起き上がる様子はない。