第8章 不審の隊長
武蔵神社の駐車場に到着し、アタシはペケジェーから降りた。
「ありがとね、千冬」
「ッス」
「今日はもう帰って、ゆっくり休んで……後の事は、また連絡する」
「ハイ」
アタシは、千冬の目を見つめる……いつも強気に相手を見据えるその瞳は、不安に揺れていた。
アタシは自分の胸に手を当てて、ギュッと特攻服を握る。
「……ごめん、千冬」
「え?」
「アンタのお陰で、圭介に追いつけたのに……アタシは、圭介を止めらんなくて」
「っ…ユウさんが謝る事じゃないっスよ」
一瞬言葉を詰まらせたけど、千冬はまた平気なフリをして、アタシに小さく笑った。
その後、千冬はペケジェーに乗って自分の家に帰って行く。
アタシはそれを見送ってから、神社の階段を上った。
集会はとっくに解散してるから、夜の神社は静かで、風が木ノ葉を揺らす音しか聴こえない。
いつもなら、もうみんなそれぞれ家に帰ってるハズで、ここには誰も居ないんだけど……
階段を上り切って、アタシは神社の境内に入る。
石段に目を向けると、そこには
「和月…」
「………」
マイキーと、何故か横になってるタケミっちが居た。
マイキーは、石段から一足で飛び降りて、早足でアタシに向かってくる。
「マイキー、ごめん」
バッ ギュッ
アタシが「ごめん」と口にしたのとほぼ同時、マイキーの両腕がアタシをキツく抱き締めた。
肺が圧迫されて思わず口から息が吐き出されてしまうくらい、強い力で。
「っと!」
マイキーの肩から特攻服の上着が落ちたけど、アタシが咄嗟に上げた手に引っかかり、地面に着く事はなかった。
「マイキー、上着が…」
「和月っ」
アタシの声を遮った、マイキーの震えた声が耳に響く。
「勝手にどっか行くな」
「…ん、ごめん」
マイキーの息が少し乱れてる……心音も速い。
アタシが何も言わずに飛び出したからか、マイキーを不安にさせてしまっていたみたい。
「……場地は?」
「……止めらんなかった」
アタシの答えに、マイキーは「そっか」と一言呟いて、それ以上は何も言わなかった。