第8章 不審の隊長
ガシッ ダン!
アタシは場地に飛びかかり、胸ぐらを引っ掴んで地面に押し倒した。
「許さない許さない許さない‼︎」
地面に背中を打った、場地の表情が歪む。
「嘘だろうが本気だろうが、アンタまでそれを口にするなんて‼︎絶ッ対に許さない!!!」
特攻服を掴んだ手で場地の胸を押さえつけ、アタシは燃えるような怒りをぶつける。
「何で……ッ」
言葉じゃ足りない怒りが、涙になって溢れた。
アタシの目から溢れた涙が、場地の頬に落ちて弾ける。
場地は鬱陶しそうに顔を顰めて、アタシに「離せよ」と呟いた。
アタシは涙を拭いもせずに、場地の目をキッと睨む。
「圭介……アタシは──」
その時、視界の端に影が映った。
「!オイ──」
ヒュッ ゴッ
視界の端から迫って来た何かが、アタシの頭を打ち、アタシの体は軽く飛ばされた。
誰かに蹴られた…⁉
地面を転がるアタシが顔を上げるより先に、弾んだ声がかかる。︎
「楽しそうな事やってんじゃん!オレも混ぜろよ」
「っ、一虎!」
地面に手を付いて体を起こしながら、アタシは目の前に立つ男を……芭流覇羅の特攻服に身を包んだ一虎を睨んだ。
大きな目でアタシを見つめた一虎は、口元に弧を描く。
その後、やれやれと起き上がる場地の方を振り向いた。
「よぉ、場地」
「久しぶりだな…一虎」
「イイトコ邪魔しちまったか?」
「いや、いいタイミングだ」
一虎が、場地のそばに立って手を差し出す。
場地は、それを掴んで立ち上がった。
アタシは、痛む頭を手で押さえながら、その光景を見つめる。
「………」
喧嘩でも抗争でも、いつもどちらかが地面に膝をついてたら、どちらかがああやって手を貸してた……
何度も見てきた光景で、いつかもう一度と願った光景のハズなのに……
「こうやって3人揃うと、昔に戻ったみてーじゃね?」
一虎が再び、アタシの前に立った。
「なぁ、ユウ。オマエも、そー思うだろ?」
ニコニコと笑いながら、場地にしたようにアタシに手を差し出す。
今さっき自分が頭を蹴り飛ばしたヤツに向ける表情じゃない。
バシッ
「いてっ」
アタシは、一虎の手を叩いて拒絶した。