第8章 不審の隊長
どこか愉しげに呟く稀咲の声と、静かに交わされたマイキーとドラケンの会話……
それを聴きながら、アタシは深く息を吸い込んで、大きく吐き出す。
その後、アタシは場地の後を追って走り出した。
「‼ユウ」
「和月‼︎」
止めるマイキー達の声は無視して、アタシは隊員達の間を走り抜け階段を駆け降りる。
マイキーが怒るとか、ドラケンが心配するとか、今は考えてらんなかった。
ウンバァァ!
「場地さん‼︎」
「!圭介」
ゴキの排気音と、千冬の叫び声が聞こえた。
アタシが階段から駐車場へ降りた時には遅くて、ゴキに乗った場地は発進してしまった。
アタシより先に場地を追いかけてた千冬は、止められなかった事にショックを受けた様子で、呆然と立ちすくんでる。
アタシは千冬の元に駆け向った。
「千冬ー‼︎」
「!ユウさん…」
バシィッ
「イッ⁉︎」
彼の背中を叩いて、怒鳴りつける。
「ぼーっとしない!追いかけるよ!」
「!…ハイ!」
アタシに返事をして、千冬は自分の愛機に向かい、すぐさま跨る。
アタシも後部に跨って、しっかりとシートを掴んだ。
仲間から不審に思われてる場地を、追いかけるヤツなんて他に居ない。
だから、アタシと千冬で止める!
場地をこのまま行かせるワケにはいかない‼︎
◇◆◇◆
千冬とアタシの乗るXJ400(ペケジェー)が、場地の乗るGSX250E(ゴキ)の後を追う。
場地はすぐ追跡に気付いて、ゴキのスピードを上げた。
「クソ…」
自分もスピードを上げながら、千冬は焦ったように呟く。
「オレのテクじゃ、本気の場地さんに追いつくのは……」
「いいから追って。……追いつかなくていいから」
「え?」
「あ、次の通りは左に曲がるつもりでいてね」
頭の中に地図を思い浮かべながら、アタシは千冬に指示を出す。
千冬は文句も疑問も口にせず、「わかりました」と答えてくれた。
ヴォン
「!あ⁉︎」
排気音が鳴った直後、千冬が驚愕に悲鳴を上げた。
「ユウさん!場地さんが右に曲がっ」
「止めて‼︎」
「ええ⁉︎は、ハイッ」
千冬がスピードを落とす。