第8章 不審の隊長
場地はつい数日前にアタシを殴ってる……この場のみんなが、場地の動向に気を張っていた。
場地はいつものように不敵に笑いながら、こちらに足を向け近づいてくる。
「オイ、場地…それ以上──」
ドラケンは、場地を制止しようとしたけど……
パンッ
「つッ」
場地は三ツ谷とムーチョの間を抜けて、“タケミっちの”右頬を殴りつけていた。
「⁉︎」
予想外の事に、アタシは呆気に取られた。
その間にも場地は、タケミっちを容赦なく殴り続ける。
ゴッ
右の次は左頬を
ドッ
蹌踉めいたところに腹を
「っ‼︎」
ガッ
そして、顔面。
殴られたタケミっちの鼻から血が垂れた。
ガッ!
「!」
次の拳を構える場地の腕を、背後から三ツ谷が止めた。
「場地、やめろや」
「放せや三ツ谷。殺すゾ」
腕は離さないまま、三ツ谷は場地を睨むように見つめる。
「オマエ…何がしてぇの?」
場地はその問いには答えず、三ツ谷の腕を振り解いた。
「マイキー‼︎」
場地が呼ぶと、神社に居るマイキーが場地に目を向けた。
睨んでこそいないけど、その瞳は暗く冷たい。
「……何しに来た?場地。オマエは、内輪揉めで集会出禁にしたはずだ」
「今また、ショボいガキ殴っちまった」
場地はニヤニヤと笑いながらタケミっちを示して、マイキーを見つめる。
「大事な集会ぶち壊したオレは、今度こそクビか?」
まさか……
(なんだ?何言ってんだ、この人)
「……場地──」
マイキーが何かを言いかけたところに、透かさず場地は口を開く。
「オレ、芭流覇羅に行くわ」
「⁉︎」
その衝撃的な宣言に、アタシは目を見開いて、強く拳を握り込んだ。
「問題児はいらねぇんだろ?マイキー」
「場地‼︎」
「辞めてやるよ──壱番隊隊長・場地圭介は、本日をもって東卍の敵だ‼︎」
(壱番隊隊長⁉︎)
アタシ達の目の前でそう宣言して、場地はみんなに背を向け、武蔵神社を後にした。
「ハハ…荒れてんなぁ、東卍は」
「場地…」
「マイキー、気にすんな。アイツは、そういう奴だ」
「……ああ」