第8章 不審の隊長

まるで、つい先日のアタシと場地を見てるみたい。


場地にはアタシを殴る理由があったけど、タケミっちが稀咲を殴った理由は…考えてもわかんない。


「オイ、何やってんだアイツ⁉︎」


「ヤバくね？」


「幹部に殺されんぞ」


プッと、稀咲が地面に唾棄する。


濱田が、稀咲の前に出てタケミっちを睨んだ。


「オイ‼︎誰だテメェ⁉︎」


（やべぇ…やっちまった）


「タケミっち‼︎」


まだみんな動かない中、アタシは真っ先にタケミっちの元に向かう。


ガッと彼の胸ぐらを掴んで、その目を強く睨みつけた。


「アンタ、何考えてンの⁉︎何で稀咲を殴った⁉︎」


「ユウさん…」


稀咲が元・愛美愛主だから？無礼な態度が気に障った？即隊長就任が気に入らなかった？それとも、個人的な因縁？


文句があるなら、何でさっきドラケンが前に出ろと言った時に動かなかったの？


マイキーやドラケンが怖くて黙ってたなら、何で解散もしてない今殴ったの？


「東卍でもねぇテメーが何やってんだ⁉︎タケミっち!!!任命式潰す気か⁉︎」


「ドラケン君…」


「どういう事だ、タケミっち⁉︎」


「テメェ、マイキーの顔に泥塗るつもり⁉︎」


ドラケンを始め、三ツ谷、スマイリー、ムーチョ──東卍の幹部がタケミっちを囲む。


「違うんスよ、みんな…オレは…」


「違うって何が⁉︎言い訳があんならちゃんと言え‼︎」


「オレ、は…」


怒鳴るアタシに、タケミっちは焦った表情を浮かべてる……アタシは、ワケが分からなくて益々イラついた。


──そこへ、場違いな声がかかる。


「なんだ？なんだ？」


「！」


隊員達を分け入って石段の上へ、堂々とこの場に現れたのは、特攻服に身を包んだ場地だった。


「オモシレェ事になってんじゃん！」


「場地…」


「テメェ、謹慎中だろ？」


（え？場地？誰だ⁉︎）


「圭介……」


突然の場地の登場に、アタシは焦った。


場地まで稀咲を殴る気じゃ……というか、まさか場地が集会に来たのは稀咲の隊長就任をブッ潰す為なんじゃ⁉︎


ガシッ　グイ


「う、わっ」


「ユウ、オマエは退がってろ」


不意に腕を引っ張られ、アタシはドラケンの背中に庇われた。