第8章 不審の隊長
「……まぁ」
最近ずっと暗かったマイキーも、ピリピリしてたドラケンも、数日ぶりに楽しそうにしてるから……それは良かったけど。
「ん?」
「なんか言ったか?ユウ」
「なんでもなーい」
これも、湿布が取れた効果かな。なんて。
◇◆◇◆
銭湯の前で、マイキー達を待つ。
「お、いたいた」
「集会前に銭湯たぁ呑気だな」
「まだユウだけか?」
待ってる間に、三ツ谷、スマイリー、そしてムーチョがこの場に合流した。
「お疲れ。マイキー達ならもう少ししたら出てくると思うけど」
「ドラケンも?」と聞いてくる三ツ谷に、アタシは「うん」と頷いて答える。
それを聞いてたスマイリーが、ふと思い出したように首を傾げた。
「ドラケンは刺青(スミ)あるクセに何で銭湯入れんだ?」
「こめかみだから、髪下ろせば隠せるんだよ」
「ほぉー?バレりゃ出禁間違いナシだな」
「スマイリー、余計な事しないでよ。ケン銭湯好きなんだから」
まぁ冗談だろうけど、アタシは念の為注意しておいた。
「……あ、そうだ。三ツ谷」
「ん?」
「今、タケミっちもマイキー達と銭湯ん中いるんだけど」
「タケミっちも?」
「なんか最近、タケミっちの様子が変な気がして……アタシがそれマイキーに伝えたら、マイキーが『男なら裸の付き合いだ!』って言い出した」
三ツ谷は「なんだソレ」とマイキーの言動に笑ったあと、「うーん」と考えるような仕草をした。
「タケミっちなぁ……確かに変な感じはあるな。前回の集会ん時とか、初めて集会に呼んだ時より落ち着きなかったっつーか」
「やっぱり?」
「…まぁ、抗争の話にビビってただけかもしんねーけど」
「それなら良いんだけど、なんかそれだけじゃない気がしてさ」
アタシが言ったことに三ツ谷は怪訝そうな顔をして、「例えば?」と聞いて来た。
アタシは顎に手を当てて、最近のタケミっちの様子を頭に思い浮かべる。
「今のタケミっちはまるで、初めて会った頃に戻ったみたいな……」
いや、それとも違う。
「別人、みたいな……」
「おっ!やっと出てきたみてーだぞ」
「!」
アタシの呟きは、スマイリーの声によってかき消された。