第8章 不審の隊長
───10月20日
ペリペリと湿布を剥がして、自分の頬に触れる。
洗面所の鏡を覗き込んで、アタシは大きく息を吐いた。
「ハァー…やーっと腫れ引いた」
赤くなってた肌も、腫れて膨れてた頬も綺麗に治った事に安心する。
アタシは顔を洗って、タオルで念入りに頬を擦った。
ただでさえ苦手な湿布の匂いに何日も付き合わされたんだから、早く解放されたかった。
「圭介め……次会ったら絶対ブッ飛ばす!」
イライラと恨み言を溢しながら、アタシは洗濯機にタオルを放り込んで洗面所から出た。
特攻服に着替え終わった所で、いつものように家に近づく重低音が聴こえてくる。
財布と携帯だけポッケに突っ込んで、アタシはブーツを履き家を出た。
◇◆◇◆
今日は集会の前に、マイキーとドラケンが銭湯に行くと言う。
「タケミっちも誘った」
「タケミっちも?」
「和月言ってただろ?タケミっちの様子が心配だって」
「……確かに言ったけど」
少し前から、タケミっちの様子がいつもと違う事に、アタシは違和感を覚えてた。
マイキーにも話したけど、その時は「ふーん」て興味なさそーな返事しかしなかった。
けどホントは、マイキーもマイキーなりに、タケミっちの事を気にしてたみたい。
その事に少し感動しながら、アタシはマイキーに「それと銭湯がどう繋がんの?」と聞いてみた。
マイキーは、フフンと鼻を鳴らして答える。
「ズバリ!“裸の付き合い”だ!」
「……は?」
「男なら裸の付き合いだろ!」
「ドヤ顔で言われてもねぇ」
さっきまでの感動を返して欲しい。
「な?ケンチン!」
「あ?……あー、まぁそーだな」
テキトーに頷くドラケンを見て、マイキーはまたアタシにドヤ顔を向けてくる。
褒めろオーラがウザい。
頭の中で詰るアタシの横で、マイキーが「あ。」と思い出したように声を出した。
「ハミガキ粉忘れたわ」
「銭湯で買えばいーだろ」
「んー、そーすっかぁ」
「ハァー」
ユルい会話聞いてれば、アタシの口からは溜息が溢れてくる。
今夜の集会について、参謀のアタシがどんだけ気ィ張ってるか、総長と副隊長はわかってるんだろうか。