第7章 総長と参謀
「お疲れ……タケミっち、今日もしかして調子悪い?」
「えっと、いや、そんな事はないっス」
「そ?なんかあったら言ってね。相談ぐらい乗るから」
「あ、あざっス」
後頭部に手をやって頭を掻きながら、タケミっちは「それで、オレに何か…?」と遠慮がちに聞いてきた。
その様子にやっぱり変だなと思いつつ、アタシはタケミっちに一虎の事を伝える。
「溝中の3年に、芭流覇羅の羽宮一虎ってヤツが居るんだけど」
「バルハラ⁉︎ウチの中学に⁉︎……いやでも、ハネミヤなんて名前、聞いた事ないスけど」
「事情があって、しばらく学校には通ってなかったから」
「そうなんスか?…まぁ、もしそんな人が居たら、学校でもっと騒がれてますよね」
タケミっちはどこか、他人事のような態度でいる……アタシはイラつきそうになりながら、それは表に出さないように抑えた。
タケミっちは一虎がどーいうヤツか知らないんだからしょーがないでしょ、と。
「一虎は、かなり危ないヤツだから……もしタケミっちに接触して来たとしても、絶対に関わろうとしないで、すぐに逃げて」
「えっ⁉︎オレに⁉︎」
「タケミっちは、マイキーのダチだし、東卍とも関ってるし……可能性は低いと思うけど、一虎がタケミっちに目ぇ付ける事もあるかも知れないから」
アタシは、顔を青くしてビビるタケミっちの、その肩をポンと叩く。
「もし一虎が絡んできたら、すぐにアタシに連絡してきて。必ず助けに行くから」
「わ、わかりました…!」
タケミっちは、必死な面持ちでアタシにコクコクと頷いた。
「じゃ、今日はもう帰って良いよ。またねー、タケミっち」
アタシはタケミっちに手を振って、今度はペーやんの元に向かって歩き出す。
「はい…お疲れ様です」
後ろから聞こえたタケミっちの声は、やっぱりいつもと違って聴こえた。
後ろを振り向くと、タケミっちは既に帰ろうと歩き出してた。
アタシは、その背中をジッと見つめる。
いつもと同じ金髪、アップフロントのリーゼント、溝中のシャツに詰襟にボンタン、背丈が変わったワケでもないのに……
アタシには何故か、タケミっちの背中が、いつもより小さく見えた。