第7章 総長と参謀
アタシの問いに、稀咲は「勿論」と首肯した。
東卍の隊長になるために、東卍が今おかれてる状況を好機だと、稀咲は考えたワケか。
「……参謀の貴女は今、戦力を求めてる筈だ」
「それは否定しない」
アタシは話しながら、稀咲の目を見つめる。
「東卍は、隊員約100人。対する芭流覇羅は、300人。そこに、元・愛美愛主の隊員50人を引き連れたアンタが、東卍に加わると言ってきた」
数だけで見たら、東卍の戦力は5割増す……正直、喉から手が出るほど欲しい。
「解せないのは、アンタの目的……パーの事で東卍に脅されてるワケでもないのに、アンタがわざわざ東卍に入るメリットは?」
「………」
「参番隊隊長になりたい、だっけ?本当に、それだけで満足なの?──何の為に、東卍の隊長になりたいの?」
アタシの問いに、稀咲は答えない……じっと、アタシの目を見つめてくるだけ。
「回りくどいのは嫌いなの。後になって見返り求められても堪んないし……何か目的があるなら、今言って欲しいんだけど?」
「見返り……」
呟きながら、稀咲は一瞬だけ目を伏せた。
「見返り求めない……自分でもらう」
顔を上げた稀咲が、真っ直ぐアタシの目を見る。
「オレは、自分を知っている。月は一人じゃ輝けない」
「……月、ね」
「答えになってない」って、突っ撥ねる事も出来た……けどアタシは何故か、そうする気にはなれなかった。
「東卍の隊長になるって、アンタに覚悟はあんの?」
「当たり前──」
「多分アンタは、わかってないと思う」
「?」
アタシは一つ息を吐いて、稀咲の目を睨んだ。
「東卍の隊長になれば、総長(マイキー)だけじゃない……参謀(アタシ)の命令にも従わなきゃいけないんだよ」
稀咲は最初、アタシではなくマイキーに直接交渉に行っていた……参謀の存在を知った上での行為なら、稀咲がアタシを舐めてンのは明らか。
「女に命令されるって、アンタみたいな男には屈辱なんじゃない?」
あえて挑発するように問ったアタシに、稀咲は表情こそ変えないけど……その目は、イラついてるように見えた。
でも稀咲は、それを口にはしない……自分の目的の為に飲み込んだ。