第7章 総長と参謀
「……隊長になれば勿論、参謀の命令に従います」
「……そう」
アタシは鞄に手を突っ込んで、携帯を取り出す。
「!オイ……」
「オマエは退がってろ!」
アタシに突っかかろうとした部下を、稀咲が手で制して止めた。
アタシはそれを気にせず、電話をかける……通話はすぐに繋がった。
「マイキー?」
「‼︎」
アタシが呼んだ名を聞いて、稀咲は目を見開く。
《どうした?和月》
「今、ケンと一緒?ちょっとこっち来て欲しーんだけど」
《ん?いーけど、オマエ今どこに居んの?》
アタシはマイキーにこの場所を伝えて、通話を切った。
数分待ったところで、マイキーとドラケンが合流する。
「和月〜」
「こんなとこに呼び出して、どうした?」
「…来てくれてありがと」
マイキーとドラケンはアタシを見た後、アタシの後ろにいる稀咲とその部下の姿に目を留めた。
「ユウ、ソイツらは?」
「元〝愛美愛主〟の幹部、稀咲鉄太」
ドラケンに訊かれてアタシが答えると、稀咲とその部下はマイキーとドラケンに向かって頭を下げた。
愛美愛主と聞いてドラケンは表情を険しくしたけど、マイキーは……
「稀咲…?」
稀咲と面識があるマイキーは、不思議そうな顔をするだけ。
顔だけをアタシに向けて、マイキーはアタシの目を見つめる。
「何でユウが、稀咲と一緒にいんの?」
「稀咲は、元〝愛美愛主〟の隊員50人を東卍(ウチ)に入れる代わりに、参番隊隊長になりたいって交渉しに来たんだよ」
「!」
「アタシは、その条件を飲もうと思う」
「は⁉︎」
ドラケンが、目を見開いて驚愕する。
「オマエ本気か⁉︎愛美愛主の奴を参番隊隊長にするなんて、んな事──」
「ケンチン」
予想通り反対するドラケンを、マイキーがその肩に手を置いて止めた。
ドラケンより一歩前に出て、マイキーはアタシの前に立つ。
「ユウ……」
アタシを参謀の名で呼んで、総長の表情(カオ)でアタシを見据えた。
アタシは背中に腕を組んで、姿勢を正す。
「………」
アタシも今は参謀として、真っ直ぐ総長の目を見返した。