第7章 総長と参謀
芭流覇羅からの追手はなかったけど、アタシは速度を緩めず走り続けた。
「マイキー……っ、圭介」
切れる息より、アタシの口からは震えた声が漏れ出す。
「ケン、三ツ谷……パーちん!」
すぐにでも、みんなに会いたかった。
「…………!あっ」
走ってる途中で、はたとアタシは足を止める。
携帯あるんだから連絡すりゃ良いじゃん……そう思って、ポッケから携帯を取り出して開いた。
「うわぁ……」
なんて声が思わず口をついてしまうくらい、画面には凄まじい量のメールと着信履歴が表示される。
ドラケンからより、マイキーからの方が多く掛かってるのが怖いところ。
情報収集中に携帯が鳴らないように、マナーモードにした上バイブも切ってたから……チンピラに絡まれた所でドラケンとの通話を強制終了するという、最悪の切り方から放置したままにしてしまってた。
アタシは少し考えたけど、先にドラケンの携帯に電話をかける事にする。
かけて2コールくらいで、すぐに通話が繋がった。
「もしも──《ユウ/和月!!!》──うるさっ!」
ドラケンとマイキー、二人分の怒鳴り声が耳に響く。
アタシは、キーンと残る耳鳴りに顔を顰めながら、「連絡遅くなってごめん」と先ず二人に謝った。
電話の向こうから、「返せ!」「あっ‼︎何すんだよ!」なんて会話が聞こえて来る。
どうやらドラケンから携帯を横取りしようとしたマイキーを、ドラケンが阻止した様子。
《ユウ、オマエ今どこに居る⁉︎》
「えーっと……」
アタシはもう一度後ろに目を向けて、追手がないことを確認しつつ、念の為もう少し離れた場所にしようと、今居る場所より隣にある通りの名前を伝えた。
《無事なんだな?》
「うん。チンピラはボコして……逃げて来た」
《ったく、無事ならサッサと連絡しろ。危うくマイキーが暴れるところだったろが》
「ごめーん。なんか携帯持ってる事頭から抜けてて……」
電話口から再び、「ケンチン!」とドラケンに文句を言うマイキーの声が聞こえてくる。
《静かにしてろ!……いい加減うるせぇから、マイキーに変わんぞ》
「うん」
《和月‼︎》
アタシが「うん」と言い切るより早く、マイキーの声が耳に響いた。