第7章 総長と参謀
「なに驚いたフリしてんだよ、ユウ」
一虎の笑顔には、狂気すら感じた。
「“ここ”に、すぐそこに芭流覇羅の拠点があるこの場所にオレが居る時点で、オマエにはわかってたハズだろ?」
「それは……!」
「オレが何で芭流覇羅に居るか、目的を教えてやるよ」
一虎がアタシに顔を近づけ、耳元に口を寄せる。
そして、ハッキリと言い放った。
「東卍ブッ潰して、マイキーを殺す為だ」
「⁉︎」
グッ
告げられた言葉に、アタシは反射的に身を引く。
けど、アタシの腕を掴んだ一虎の手が、それを許さなかった。
「なぁ、ユウ」
右手はアタシの腕を掴んだまま、一虎は左手を上げる。
「参謀なんて辞めちまえよ」
一虎の指先が、アタシの胸……上胸の中心に、トンと触れた。
「でないと、オマエもタダじゃ済まねえぞ」
服越しに爪を立てて、ガリッと引っ掻く。
「っ……」
走る痛みに、アタシの体は僅かに跳ね、反射的に眉根を寄せた。
そんなアタシの様子を、一虎は愉しそうに眺めた。
ガシッ
アタシは、掴まれてない方の手で一虎の手を掴み、その目を強く睨み付けた。
「“コレ”に、気安く触らないでくれる?」
「冷てぇこと言うなよ。オレとオマエの仲だろ?」
バシッ
「!」
叩くように、一虎の手を振り解いて、アタシは二歩後ろに飛び退がる。
一虎は「逃げんのウマ!」なんて言って笑ったけど、それ以上アタシを捕まえようとしては来なかった。
「一虎……アンタ、何考えてンの?」
「さっき言ったろ?オレの目的は──」
「東卍を潰す?マイキーを殺す?……何で、アンタがそれを口に出来んのよ⁉︎」
アタシは、また鼓動が速まるのを感じる……でも今度は、緊張からじゃない。
「アタシはっ……ずっとアンタを、仲間だと思ってたのに」
「………」
一虎の顔から、笑みが消える。
「じゃあ、オマエが芭流覇羅に来いよ」
「え…?」
アタシに、芭流覇羅に来いと……一虎は、確かにそう呟いた。
「何言ってンの?……アタシが、東卍を裏切るワケないでしょ⁉︎」
「ユウもマイキーを酷ぇと思うだろ?オレはアイツのせいで、2年間も少年院に入れられてたんだ」
「は?」