第7章 総長と参謀
「髪、パンチじゃなくなってるし」
頭指差して話すアタシに、一虎はなるほどと納得してまた笑う。
一虎の動きに、彼の耳元のピアスがリンと鳴った。
「……ピアス開けたんだ?」
「お、気付いた?そーそー、少年院(ネンショー)出てからな。小5で開けようとした時は結局やんなかったから」
「似合ってるよ」
「………」
一虎は左手を上げて、その細い指でピアスを弄ぶ。
アタシは、早る鼓動を気にしないようにしながら、吐きそうになった息をぐっと飲み込んだ。
見た目が変わったとか、そんな会話より、聞かなきゃいけない事がある……聞いて良いものか、迷う事でもあるけど。
「一虎……」
「ん?」
「マイキーには会ったの?」
ピクッと反応した一虎が、大きな目を更に見開く。
訊きはしたけど、アタシは「会ってない」という答えを知ってる……マイキーが一虎と再会してて、アタシが気付かないハズないから。
アタシは、アタシより少し高い目線にある、一虎の瞳を見つめた。
「マイキーに、会う気はあんの?」
「………今、会うのはどうだろうな……」
アタシを見つめ返して答える、一虎のその瞳に、暗さが差す。
「アイツに会ったら、その場で殺しちまいそうだ」
「⁉︎」
一虎がサラッと口にした「殺す」という言葉に、アタシは呆気に取られてしまった。
「なぁ、芭流覇羅って知ってる?」
「!……知ってるけど」
「だよな。オマエがここに居んのは、芭流覇羅を調べる為だろ?」
ザッ
手を伸ばせば触れる距離にいた一虎が、更に一歩アタシに踏み込んでくる。
詰められた距離を離そうと、アタシは後ろに一歩引いたけど、一虎はすぐにまた詰めて来た。
「ユウ……オマエさ、出所したオレが東卍に戻るとでも思ってた?」
「……戻って来て欲しいって思ってたよ。一虎は、アタシ達の……東卍の仲間だから」
「今は違う」
「!」
ハッキリと言い放つ一虎に、アタシは口を噤む。
「オレ、芭流覇羅のNo.3やってんだ」
「…は?」
アタシは、驚愕に目を見開いた。
一虎の言った事が信じられなくて……信じたくなくて、思考が止まる。
ギュッ
そんなアタシの左手首を、一虎が強く掴んだ。