第7章 総長と参謀
ドサッと地面に倒れたチンピラ3人を見下ろして、アタシは路地を芭流覇羅の拠点がある方向に目を向ける。
「……よし」
仲間呼ばれる前にコイツらを気絶させられた事に、口から安堵の息を吐いた。
「ふー、セーフセーフ」
「いやアウトだろ」
「うるっさいなぁ。バレなきゃセーフでいいんだよ、こんなのは──ん?」
あれ、今誰がツッコんだ?そしてアタシは何ナチュラルに言い返してんの……
バッと後ろを振り向いて、アタシは声の先に目を向ける。
そこには、いつのまにか一人の男が居て……軽い足音を鳴らしながら、ゆっくりとアタシに近づいて来てた。
リン…と鳴る、鈴の音が聴こえる。
「男三人を一撃か〜!相変わらず強えな」
聴き覚えのある声に眉根を寄せながら、アタシは男の方を向きジッとその顔を見つめた。
「……アタシに何か用?」
黒髪に、金のメッシュ
「ん?……下心だよ」
整った顔立ちに、憂いを帯びた大きな瞳
「イイ女がチンピラに絡まれてっから、助けてやって恩売って、あわよくば頂いちまおうっつー下心」
左耳で揺れる、鈴のピアス
「ふーん……まぁアンタ結構イケメンだし、アタシ以外の女ならイチコロだったかもね」
そして……首元に刻まれてる、虎を象った刺青(タトゥー)
「──……一虎」
アタシが名前を呼ぶと、その男・羽宮 一虎は、アタシに向かってニコッとした笑みを浮かべた。
「久しぶり、ユウ」
どうして、“ここ”に一虎が……
喉が詰まって痛みすら湧いてくるような感覚が、アタシの体を襲う。
アタシはそれを気にしないようにしながら、一虎に向かって笑った。
「……出所おめでと。元気そうで良かった」
アタシと一虎が、こうして話すのは2年ぶり……2年前の“事件”から、一虎はずっと少年院にいたから。
「いつ出てきたの?」
「つい最近、やっとだよ」
「そっか。連絡くれたら良かったのに」
「……なに?オレが連絡したら、ユウは会いに来てくれんの?」
一虎の問いにアタシが「行ったと思う」と答えたら、一虎は少し間を置いて「ハハッ」と声を出して笑った。
「相変わらず優しいなぁ、ユウは」
「アンタは変わったね」
「そうか?」
「主に見た目が」