第7章 総長と参謀
場地の顔は不快そうに顰められてる。
「あんだけデカく名乗り上げて、東卍に喧嘩売っといて、総長が居ねえ?ふざけてンのか⁉︎」
「半間はどうした?アイツがアタマなんじゃねえのか?」
怒りを露わにする場地の横で、三ツ谷が冷静に問う。
アタシは、三ツ谷に目を向けて答えた。
「実質、芭流覇羅のアタマは半間だけど……アイツは、頑なに“副総長”を名乗り続けてる」
「理由は?」
「わかんない……そもそも理由なんて無いのかも」
「?どういう意味だ?」
三ツ谷に聞かれてアタシは、頭の中に半間の姿を思い浮かべる。
アイツが口にした言葉、やってきた行動、狂気を纏った性質を、思い出す。
「……アタシも、最初知った時めっちゃ腹立ったんだよ。さっきの圭介みたいに、ふざけんな!ってさ」
今でも腹立つのは変わんないけど……アタシは視線を下にさげ、湧き出てくる怒りを飲み込んだ。
「でも、怒りを抑えて考えてみると、総長不在っていうのは芭流覇羅の本質を顕してんじゃないかって、妙に納得がいったんだよね」
「……オイ、もっとわかりやすく言え」
「えええ」
恥ずかしげもなく「わかりやすく!」を要求してくる場地に若干笑わされながら、アタシは説明を続ける。
「半間は、目的は東卍潰しって宣言して、実際に東卍に喧嘩売ってきた。愛美愛主を利用して起こした決戦は前座で、芭流覇羅として挑むのが本番だと、高らかに宣言した」
順を追って話すアタシに、痺れを切らした場地が「つまり?」と答えを急かして来た。
アンタの為に噛み砕いてやってンのに!という気持ちを込めて、アタシは少しだけ場地を睨む。
その後顔を前に戻して、アタシは再度口を開いた。
「芭流覇羅は、東卍を潰す為だけに作られた集合体で、そもそも暴走族ですらない……総長不在は、暗にそれを知らしめてる」
「「「!」」」
これはアタシの考え過ぎかもしれない……
でも、そういう考えに行きつけでしまうほど、芭流覇羅の東卍への敵意は顕著で、異質だった。
「……芭流覇羅は──」
今まで無言で聞いていたマイキーが、口を開き呟く。
「東卍を潰す事で、暴走族になろうとしてるって事か」
アタシは、マイキーを振り向いて頷いた。
「アタシには、そう思えた」
「……わかった」