第7章 総長と参謀
マイキーが、キッチンの方に目を向けて動きを止めた。
「ん?どーしたの?」
「なんかオレ、今ならケーキ我慢出来る気がする」
「!」
フッと軽く笑うマイキーの、その横顔が心底幸せそうで、アタシも無性に嬉しくなる。
「偉いじゃん」
アタシはマイキーの頭をワシャワシャと撫でて、くすぐったそうにするマイキーと、笑い合った。
アタシがマイキーから離れる事は、今までもこれからもあり得ない……そう言い切れる。
もしこの先、アタシ達が離れる事があるとしたら、その時はきっと──……
一瞬だけ頭をよぎった予感を、アタシは自分で否定するように思考を切り替える。
それはそれで、あり得ないでしょ、と……一人呟いて、予感は胸に仕舞い込んだ。
◇◆◇◆
──ドラケンが退院して、最初の幹部会議……
アタシは、この場に集まった幹部達の中心に立って報告する。
「ここ1ヶ月近くの間に、東卍が潰したチームについて」
愛美愛主との決戦から、ドラケンが入院してる間は、東卍に喧嘩売ってくる輩が多かった。
愛美愛主に勝った事で更に名を上げた東卍を、副総長不在のチャンスに潰してやろうって狙って。
けど東卍は、いくらドラケンが入院してたからって、そこらの雑魚チームにヤられる程弱くない。
アタシはずっと、隊長達と連絡を取り合いながら、敵の排除に勤めていた。
「──報告は以上。今んとこ、マイキーが動くまでもなく、1コの隊で潰していけてるけど、今後も油断しないでよろしく」
「どいつもこいつも雑魚過ぎんだよなー」
スマイリーが、いつもの笑顔で「張り合いねぇ」とボヤく。
「東卍も、東京ん中じゃデカくなって来たからね……ポッと出とか、中坊(ガキ)とか、敵が気に入らない理由挙げたらキリがない」
アタシは一つ溜息を吐いてから、改めて顔触れを見回した。
そして、今日話したかった本題を口にする。
「次に……芭流覇羅について」
芭流覇羅と聞いて、隊長達の表情が変わった。
「調べてわかった事なんだけど……芭流覇羅には、総長が居ない」
「「「⁉︎」」」
「今は東京に居ないとか、怪我で動けないとか、そういうんじゃなくて……ハナから“存在しない”」
「あ?」
アタシの話に、最初に声を上げたのは場地だった。