第1章 東卍の参謀
マイキーの自転車をタケミっちに運転させて、マイキーはその後ろに、アタシはドラケンの後ろに乗って、行き先も決めないでサイクリングに出た。
アタシ達の会話にタケミっちはずっと無言だったけど、川土手の上を走ってる途中で、おもむろに口を開いた。
「あの、何でオレの事なんか気に入ったんスか?」
「……くっだらねー質問」
マイキーがつまんなそうに返すと、タケミっちは「スイマセン」と謝った。
「……オレ、10コ上の兄貴がいてさ……死んじまったんだけどネ」
「!」
「………」
懐かしむように話す、マイキーの表情はアタシからは見えない。
けど、今は声がそんなに暗そうじゃないから……止めるまではしなくて良いかな?
「無鉄砲な人でさ、自分より全っ然強ぇ奴にも平気で喧嘩挑んじゃうの」
「へーー、かっけぇ人だったんスね!」
「タケミっち、兄貴に似てる」
「へ⁉︎」
予想外の言葉にタケミっちは目を丸くして、すぐに否定するように首を横に振った。
「オレそんなかっこよくねぇっスよ‼︎どこをどう見たら」
「ハハハ!確かに、タケミっちみたくダサくねーな」
「……それはヒドいっス」
それからもう少し進んだ先で、マイキーはタケミっちに自転車を止めさせると、自転車から降りて景色を眺め始めた。
川と、手前の河川敷には草野球のグラウンド、川向こうにはビルが並んだ街が見える。
「今って、不良がダセーって言われる時代だろ?」
(そっか…この頃からそんな風に言われてんだ…)
「兄貴の時代はさ、この辺りもすっげー数の暴走族がいてさ。その辺をチョッカンコール鳴らして走ってた」
タケミっちを振り向いたマイキーは笑顔で、それを見てアタシはドラケンの陰でホッと息を吐いた。
「みんな肩肘張ってさ、喧嘩ばっかして、でも自分のケツは自分で拭いて──そんな奴らが何でダセーんだ?」
マイキーは遠く前を見据える。
「だからオレが、不良の時代を創ってやる」
やっぱりアタシからはその表情は見えないけど、想像はついた。
「オマエもついて来い。オレは、オマエが気に入った。花垣武道」
隣で何度も見てきた……睨んでるようにも、挑発してるようにも見える、あの不敵な顔をしてるんだろう。