第1章 東卍の参謀
「喧嘩強ぇ奴なんて、いくらでも居んだよ。でもな、“譲れねぇモン”の為ならどんな奴にも楯突ける。オマエみたいな奴は、そーいねぇ」
マイキーどドラケンの言葉に、タケミっちは照れたような嬉しいような、そんな顔をした。
「考えとけよ、タケミっち」
ここで解散……かな?
マイキーとドラケンが自転車の方へ歩いてくのを見て、アタシはタケミっちに手を振る。
「デート邪魔してごめんね、タケミっち。ヒナちゃんにも謝っといて」
「はい……あっ、和月さん!じゃない…えっと、ユウさん…?」
「んー、ユウって呼んで。あんま名前で呼ばれんの好きじゃないから」
アタシは普段、他人には自分をユウと呼ばせてる…敵にも、味方にも、友達にも。
ケンもそう呼んでくれてるし、マイキーも状況によって呼び分けてくれてる。
「スイマセン…」
「あーごめん、怒ったワケじゃないんだよ。アタシの気分の問題だから」
アタシは首を傾げながら「で?」とタケミっちに話の先を促した。
「マイキー君とユウさんて…こ、恋人、なんスか?」
「うん」
「……」
タケミっちは何か考えるように目線を下げる。
「ん?それだけ?」
「!あ…は、はい…引き止めて、すいません」
「?」
マイキーとアタシの関係確認したかっただけ?
それだけの事に何であんな考え込むような顔するんだろ?
「変なヤツ」
「うっ」
ショックを受けたような顔をするタケミっちを置いて、アタシはマイキーとドラケンの方へ向かった。
「タケミっちとなに話してたんだ?」
「アタシはマイキーの女だよーって話」
「なんだそりゃ」
笑うドラケンの背中をバシッと叩いて、アタシはマイキーの後ろに跨る。
マイキーが自転車を漕ぎ出し、ドラケンも後に続いた。
暫くは一緒に走って、その後それぞれの帰路について別れる。
「和月」
「んー?」
マイキーは弾んだ声でアタシに言った。
「今日は和月ん家行っていいんだよな?」
アタシは思ったままの事を呟く。
「あ、忘れてた」
その後、マイキーの機嫌を取り戻すのに少し苦労した。
いくら不機嫌でも絶対に家(ウチ)に来るのがマイキーらしいけど。