第1章 東卍の参謀
「不良は一発殴ったくらいで退いたりしないし、確実に怒らせる。いつか大怪我するよ」
「和月ー」
「さっきケンにされたみたいに、ヒナちゃんが不良の手に捕まったら、それだけでタケミっちは逃げられなくなる。彼の為を思うなら、アンタは常に安全なトコにいなきゃ──」
パンッ!
「!わっ」
いきなり、マイキーに目の前で猫騙しをされて、アタシはビックリして目を瞬かせた。
「そんな説教しなくても、ヒナちゃんなら大丈夫だって」
「せ、説教……?」
チラッとヒナちゃんを見ると、彼女は落ち込んだような顔をしてた。
やっばー……初対面なのに説教垂れるなんて、ひっどい事してしまった。
「ご、ごめん、ヒナちゃん。そんな説教するつもりじゃなかったんだけど、変に熱くなっちゃって……」
「あ…いえ、私は大丈夫です。和月さんが言ってた事は、正しいと思います。……私のせいで、タケミチ君に危ない目に遭って欲しくない」
「ヒナ……」
ヒナちゃんを見る、タケミっちの顔も心配そう。
「オマエ、自分の事棚に上げて、よくあんなエラソーな事言えたな」
「ごめんって!」
ドラケンにまでツッコまれて、アタシは痛む胸を押さえながら全力で謝った。
こんな素敵なカップルにアタシはなんて事を!と反省する。
「謝らないでください!和月さんのお陰で、とても勉強になりました」
ヒナちゃんはニッコリとした笑顔で、そんな優しい事を言ってくれた。
「じゃあタケミチ君、ヒナ…行くね?」
そう言って、ヒナちゃんは踵を返し校舎の方へと戻ってく。
「え?デートは?」
「今度でいいよ。せっかく友達が遊びに来てくれたんだし」
ヒナちゃんに向けて、マイキーはヒラヒラと手を振った。
「バイバーイ。今度は叩かないでね♡」
「マイキーも大概しつこい」
ヒナちゃんは、最後にこちらにペコっとおじぎをしながら、校舎の中へと入って行った。
「いいコじゃん。滅多にいねーよ、あんなコ」
「うんうん」
ホントに良い子……あんな子は、絶対に不良とか喧嘩の世界に関わるべきじゃない。
説教はやり過ぎたけど、注意できて良かったな、とも思った。
「大事にしてやれよ」
マイキーの言葉に、タケミっちはコクと頷いた。