第7章 総長と参謀
アタシはお腹に回ってるマイキーの腕を掴んで、少しだけ解かせ、上体をマイキーの方に向ける。
そのままマイキーの首元に腕を回して、ギュッと抱きついた。
「!」
「あーんして欲しかったんなら言えば良かったじゃん。そしたら、アンタの分掬って食べさしてやったのに」
後頭部に手をやって、アタシはマイキーの柔らかい猫っ毛を梳く。
「カップル飲みも、別に映画館じゃなくても出来たでしょーに」
横向きになってるアタシの腰に、マイキーの腕が回る。
「キスもさ、別に無理矢理シたって良かったんだよ」
「したら和月怒るだろ」
「時と場合によるけど……アタシがちょっと怒るぐらい、アンタは気にしやしないでしょ」
アタシはマイキーに抱き着いてた体を少し離して、片手を上げてマイキーの頬に触れた。
「アンタってさ、自分が寂しい時に限って、肝心なワガママ言わないよね」
「!……別に、寂しいなんて思ってねーけど」
「嘘ついてもダメ。わかってンだからね」
マイキーの目を見つめて、アタシは口元に弧を描いて笑う。
「アタシにはね、アンタの事なら何でもわかんのよ」
「ふーん……じゃあ、オレが今何考えてっか当ててみて」
「家帰ったらチョコケーキ食べてやろって思ってるでしょ」
「帰り道で食おうと思ってた」
アタシはマイキーの肩をバシッと叩いて、「明日まで我慢!」と言い放った。
「あ、ケーキはエマに預けよっかな」
「絶ッ対ェヤダ!オレのケーキだし!」
今度はマイキーがジト目になって、アタシを見つめる。
「つか、ハズしてんじゃん……わかるっつったクセに」
「実際に合ってるかどーかなんて関係ない。大切な人の事をどれだけ考えられるか、わかってるかって自信が大事なの」
言い訳っぽく聞こえるかもだけど、アタシは思ったままをマイキーに伝えた。
「この自信全部ね、アタシからアンタへの愛情そのものなんだよ」
「!っ…」
伝えた瞬間、マイキーの黒い瞳が僅かに潤む。
「?なん──!んぅ」
何で泣くの?とアタシが聞くより先に、マイキーがアタシにキスをした。
唇を、深く重ね合わせるキス。
「んっ……」
キス自体は触れるだけだったけど、マイキーは離れ際にペロッとアタシの唇を舐めた。