第7章 総長と参謀
「和月、イチャイチャしよ」
「え、今から?」
アタシがマイキーの方に顔を向けると、肩越しに目が合う。
「アンタもう帰んなさいよ。夜には集会とツーリングでしょ?」
「ヤダ。だって今日、まだ1コもデートらしい事してねーもん」
「は?」
マイキーが言ってる事の意味がわかんなくて、アタシは首を傾げる。
「さっきデートから帰って来たばっかなんだけど?」
「オレは物足んねーの!」
マイキーは不機嫌そうな顔をして言う。
「パンケーキ、和月にあーんして食べさして欲しかったのに、オマエがカツサンドなんて食べるから出来なかった」
「いや知らないよ」
「口いっぱいに食べてるのは可愛かったけど♡」
「……あっそ」
改めて言われると気恥ずかしくなって、アタシは顔を前に戻した。
「ダーメ」
さっきのアタシみたいに言いながら、マイキーの手がアタシの顎を掴んで後ろを向かせる。
「っ…」
自分で自分の顔が赤くなってんのがわかるから、マイキーがニマニマ笑ってんのが余計に恥ずかしかった。
「映画でもジュース、カップル飲みしたかったのに、オマエ全ッ然飲まねーし」
「だって、映画の途中でトイレ行きたくなったら嫌じゃん」
そういやストロー2本挿してたなと今更思い出す。
「キス拒否るし」
「あれは話の流れが悪かった」
「とにかく!オレは物足んねーの!」
「耳元で大声出さないで!」
顎から手を離したと思ったら、マイキーはまたアタシをギューッと抱き締めた。
ぐりぐりと頭を肩に擦り付けてくるマイキーに、アタシはどうしたもんかと考える。
イチャイチャなんて、マイキーに付き合いだしたら長いし……時間的には帰らせた方が良いんだけど……
「………」
今日はずっと、アタシにはマイキーの元気がないように見えた。
デート中は楽しそうに笑ってたけど、ふとした瞬間に見せる表情が寂しげで……
先週真一郎のお墓参り行ったばっかだし、色々思う事があるんだろうなって思ってたけど……
「……集会には遅れないように、時間が来たら帰るんだよ?」
「………」
アタシの肩に頭つけたまま、マイキーはコクと頷いた。