第1章 東卍の参謀
「それより!和月さっき、オレの事“アタシの男”って言ってたよな?」
頬にやったアタシの手をギュッと握って、マイキーは嬉しそうな顔をする。
「……言ったっけ」
「もっかい言って」
「嫌だ」
マイキーとアタシのやり取りを見て、タケミっちはようやく安心したように溜息を吐いた。
そんなタケミっちに、ドラケンはまた肩に腕を回して顔を近づける。
「タケミっち…オレ相手に凄んだな?」
「す…すいません」
「いいよ」
「え?」
まさか許してもらえるとは思ってなかったのか、タケミっちはポカンとした顔でドラケンを見た。
「“譲れねぇモンがある”……今時、“女”にそれ言う奴いねぇぞ?昭和だな」
「ハハ……」
「ビっとしてたぜ?」
タケミっちを離して、ドラケンも校舎の外に出た。
「あれ?タケミチ君、この人達って……」
ヒナちゃんは、マイキーとアタシ、ドラケンとタケミっちの様子を見て、ハッとしたように焦り出す。
慌ててこちらに駆け寄って来たと思えば、ヒナちゃんはマイキーに向かってバッと頭を下げた。
「ごめんなさい‼︎私、勘違いしちゃって!」
「いーよ、別に。すげービンタだったなぁ」
マイキーがこれ見よがしに頬をさすりながらからかうと、ヒナちゃんは顔を真っ赤にして慌てる。
「すみません‼︎」
「ハハハハ」
「ヒナちゃん可愛いねぇ」
ちゃんと謝れて偉いし、真面目で正義感が強い……どうして不良のタケミっちと付き合ってるのか疑問に思うくらい、良い子。
だけど……
「好きな男(ヤツ)の為に頑張るのはいいけど、無茶しちゃダメ。相手が相手なら、大変な事になっちゃうよ?」
「はい!」
マイキーがヒナちゃんに注意した事、アタシも結構言いたい。
「ヒナちゃん……本当に、さっきみたいなバカなマネ、もう絶対にしちゃダメだよ」
「は、はい…」
散々怖がらせたアタシが言うなって感じだけど、こういう子は怖がらせないと思い知らない気がした。
「タケミっちを守りたかったなら、走って逃げるべきだった。歩いてたんじゃ、捕まえてくれって言ってるようなモンだから」
「和月」
「マイキーに不意打ち入れたのは見事だったけどさ……不良を殴るなんてもってのほか!」