第6章 決戦を越えて
マイキーはドラケンに「じゃーなー」と手を振って、アタシを引っ張りながら病室から出た。
アタシは出際にケンを振り向いて、「お大事にー」と伝えてから扉を閉めた。
屋上目指してスタスタ歩いてくマイキーの後ろを、手を引かれるままついて行く。
アタシはマイキーの横顔を見つめながら、口を開いた。
「ケンが元気そうで、安心したね」
「ん?オレは元々心配なんかしてねーし」
なんて事を言うマイキーに「嘘つけ」ってツッコみたかったけど、言わずにおいた。
ここ数日で一番晴れてる、その綺麗な横顔に免じてね。
◇◆◇◆
病棟の屋上に着くと、マイキーは迷わず出入口の塔屋の上によじ登った。
上から頭をひょっこり覗かせて、アタシを見る。
「手ぇ貸す?」
「いらない」
アタシは軽くジャンプして、塔屋の軒を掴むと壁に足を引っ掛けながら、屋根の上によじ登った。
屋上よりもさらに高いここは、日差しの下で暑いけど、吹き抜ける風は中々涼しくて気持ち良い。
「でも、やっぱり暑いね」
アタシはシャツの胸元をパタパタと煽りながら、その場に腰を下ろした。
「和月〜」
「ん?」
隣に擦り寄ってくるマイキーに、嫌な予感がした。
「膝枕して♡」
そらきた。
「嫌だ」
「は?何でだよ!」
不機嫌顔になって迫ってくるマイキーを、アタシは全力で押し返す。
マイキーは馬鹿力で、アタシの腕力じゃまったく離せやしないけど、だからってホイホイ言うこと聞いてられるか!
「ただでさえ暑いのに、何でくっ付かなきゃなんないワケ⁉︎」
「だってオレ、和月が膝枕してくんねーと寝れねーもん」
「嘘つけ!アンタいつでもどこでも寝れるでしょ!」
走行中のバイクの後部だろうが、騒がしいゲーセンの中だろうが、マイキーは眠い時に寝る……“誰かと一緒に居る時は”。
寝れないのは、一人きりの時、手元に〝命のタオル〟が無い時ぐらいで……
「隙あり!」
「あっ、こら‼︎」
ガバッと覆い被さるように、マイキーがアタシの膝の上へうつ伏せに倒れ込んだ。
アタシは「退けろ〜!」と足を揺さぶるけど、マイキーは「絶対ぇ退かねぇ」と片腕をアタシの胴に回してくる。