第6章 決戦を越えて
「タケミっち来たら、コレ渡しといて」
「あ?──!」
紙袋の中を見て、ドラケンが目を見張る。
「オマエ、コレ……」
マイキーが家から持ってきた紙袋の中身は、東京卍會の特攻服……
それもただの特攻服(トップク)じゃなくて、総長(マイキー)が東卍立ち上げの時に着ていた唯一無二の一着だった。
「なんでタケミっちに?」
「んー…オレなりの礼?」
「何で疑問系になんの」
首傾げるマイキーに、アタシは苦笑してツッコむ。
ドラケンが、チラッとアタシを見た。
声には出さないけど、その目が「本当にいいのか?」って聞いてくる。
アタシは肩を竦めながら、「反対したんだけどね」と話した。
「マイキーがどうしてもって言うから」
「だってオレ持ってても、もう着ねーし」
「タケミっちだって、こんなの貰ったって着れないでしょ」
こっそり一人で着る可能性はあるけど……タケミっちはやっぱりビビって着れないと思う。
「……まぁ、着るか着ねぇかはタケミっち次第だけど」
マイキーは特攻服を一瞥だけして、すぐに顔を上げる。
「でも、オレはアイツに持ってて欲しいんだ」
そう話すマイキーの表情は笑顔で、それを見たらもう、ドラケンやアタシから言える事は何もなかった。
おもむろにマイキーが、腕を上げてぐーっと伸びをする。
「あーなんか、眠くなってきた」
マイキーの言葉に、ドラケンは「またか」と呟いた。
「マイキーの腹いっぱいになったら寝るクセは直んねえな」
「そもそもケンのお見舞いなのに、何でマイキーが半分も食べてんのよ」
アタシは半分近くのたい焼きが消えた箱を見て、マイキーにジト目を向ける。
マイキーはまったく意に介さず、アタシの腕を掴みながら立ち上がった。
「和月、屋上行こ」
「えっ」
「眠ぃから昼寝すんの」
アタシは椅子から立ち上がらされながら、「えー今から〜?」と思ったまま文句を言う。
「外暑いから嫌なんだけど」
「いーじゃん!ちょっとだけ」
「オマエら病院であんまイチャつくなよ」
「マイキーに言ってよ」