第6章 決戦を越えて
「これ…」
「今月の新刊からマイキーが選んだやつ」
「ケンチンの好みはオレが一番知ってるかんな!」
自信満々にドヤ顔するマイキーに、今度はアタシが呆れ顔。
ドラケンは、たい焼きの時よりずっと嬉しそうに笑って、さっきより強く「ありがとな!」と言った。
「マジで暇で死にそーだったんだよ」
「喜んでくれて良かった。また差し入れるね」
「雑誌なんてよく思い付くよなー、和月。オレ、お見舞いに何やったら喜ぶかなんて全然わかんねぇ」
「そりゃ難しいだろーね。他人のお見舞いに自分の好物選ぶようなアンタには」
アタシが揶揄うと、マイキーはムッとした顔になって「たい焼きはウマいからいーんだよ!」ってナゾ理論を返してきた。
ドラケンが、丁寧にサイドの引き出しに雑誌を仕舞う……別に今読んでもいいのに、律儀なヤツ。
「ケンと面会出来るようになったって、東卍のみんなにも伝えたから、後でめっちゃ来ると思うよ」
エマも友達との用事終わったらソッコー来るだろうし。
「来んなっつっとけ」
「ってケンは言うだろうけど、それは照れ隠しだから気にしなくていーよ、ってメールしといた」
「オイコラふざけんな」
「愛されてる自覚持ちなよ、副総長〜」
ニヤニヤと笑うアタシに、ドラケンは「余計なお世話だ!」と怒りながら顔を逸らした。
こめかみに青筋立ってはいるけど、耳は赤くなってるから、やっぱ照れてんだと思う。
「まぁ、お見舞い行くなら午後からにして〜とも伝えたから、まだ大丈夫だと思うよ?」
ドラケンは諦めたように「昼寝出来ねえじゃねーか」と溜息を吐いた。
「……逆にタケミっちには、午前中に来てってメールしといた」
「!」
「タケミっち、ケンの事すごい心配してたよ」
アタシはここ一週間のうちに何度も、タケミっちから『ドラケン君のお見舞いいつから行けますか?』ってメールを受けてた。
その事を話すと、ドラケンは「心配し過ぎだろ」とまた呆れたような顔をする。
多分これも照れ隠し……だって目が優しいから。
「ケンチン」
ずーっとたい焼き食べ続けてたマイキーが、足元に置いてた紙袋をドラケンに差し出した。