第6章 決戦を越えて
「和月?」
「何ぼーっとしてンだよ、ユウ」
思い出に耽ってたアタシに、マイキーと場地が不思議そうに声をかける。
「んー…勝利の余韻に浸ってた」
今は今で楽しいけど、たまにはこんな日があってもいいなと思った。
「それじゃ、二人には約束通りダッツ奢ってもらおっかな」
「よりによってダッツかよ!」
場地は頭を掻きながら、「んな金ねえぞ」とぼやく。
その横で、マイキーがいきなりバッと手を挙げた。
「なぁオレ、ゲーセン行きたい!」
「また唐突だな」
「マイキーの思いつきなんていつもの事じゃん」
アタシが場地の肩をポンと叩くと、場地は諦めたように肩を落とした。
「いーじゃん。このまま3人で行こーよ」
アタシの手を掴んで引っ張るマイキーに、アタシは「しょーがないなぁ」とついて行く。
いつのまにか、胸にあった不快感は消えていた。
「じゃあ自販機アイスで我慢したげる」
「2個も食ってたら太んぞテメー」
「なぁに?圭介はダッツ奢りたいの?」
「オラテメーら、さっさとゲーセン行くぞ」
「切り替え早!」
〝お疲れの日〟…… 最初に言い出したのは確か、マイキーでも場地でもなくて……
──「和月は頭が良いから、時々パンクしちまうんだな」
──「万次郎、圭介、今日は目いっぱい和月甘やかすぞ!」
じんわりと胸が温かくなるような、優しい感覚に、アタシは頬を緩ませた。
「どこのゲーセン行く?」
「いつもんトコでいーだろ」
「あのゲーセンて最近、高校生の不良グループが入り浸ってるらしいよ」
カツアゲやら酷いナンパやら、アタシは噂で聞いた事を伝える。
「ふーん?興味ねーけど」
「あ?んなモン──」
マイキーと場地は二人して、アタシに向かってニッと笑った。
「ぶっ飛ばせばいーじゃん」
「ぶっ飛ばしゃいーんだよ」
不敵で無邪気なその笑みは、あの頃と何も変わらない。
「……そうだね」
それが、なんだか嬉しくて
「ムカつくヤツは全員、アタシ達でぶっ飛ばそ!」
アタシも、二人に向かってニッと笑った。