第6章 決戦を越えて
まぁ、林の中熟知してンのはアタシも同じだから、撒かれやしないけど。
「どうした⁉︎今日はやけに遅えじゃねえか」
「そう?」
ザッ
アタシは場地の前に回り込んで、行く手を遮った。
「!」
場地はすぐに方向を切り替えて、アタシの正面から右手に走ってく。
アタシはもう一度同じように回り込んで、場地の逃げる方向を右に切り替えさせた。
「クソ…」
場地が林の外に出るように。
ホントは林の中で捕まえてやりたかったけど、今回は制限時間付きだからしょーがない。
障害物がなくなれば、後は純粋な速さ勝負。
アタシは場地の背中を追いかけて、追いかけて、追い越して──
「おりゃ‼︎」
バシィッ
「痛ッてえ‼︎」
場地の横についた瞬間に、広い背中を力一杯ぶっ叩いた。
「ハイ終ー了ー」
バタバタと走ってた足を遅めて、やがて止まった場地は息切らしながら膝に手をつく。
「ゼェー、ハァー」
「ハハッ!息荒れすぎ」
「テメーはっ…ハァーッ、何で平然としてンだよ⁉︎」
「いやいや、アタシだって息切れてるよ」
肩が少し上下する程度だけど……鬼役は精神的な優位さがあるからか、逃げる役より疲れないんだよね。
「残念だったなー場地」
神社から行く末見守ってたマイキーが、アタシ達の方に歩いてくる。
「マイキー時間(タイム)は⁉︎」
「4分52秒で和月の勝ち」
携帯で測ってたタイムを確認して、場地は「ぐっ」と悔しげに喉を鳴らした。
「残り8秒だったんだ…あっぶな」
全然余裕なかったんじゃん……「5分でヨユー」とか言っといて恥ずかしー。
「いや〜、二人とも速くなったねぇ」
「その上から目線ヤメロ」
「あーあ、今日こそ勝てると思ったのに」
ニマニマ笑うアタシに顔を顰める場地、その横でマイキーはつまんなそうに頬を膨らませてる。
幼い頃に戻ったみたいな、懐かしい感覚に、アタシはそっと目を細めた。
東卍を結成するよりも前、ドラケンと出会うよりも前……この3人で毎日駆け回って、たくさん遊んで、たくさん喧嘩した。
あの頃のアタシ達は、まだ何も背負ってない、ただの悪ガキだった。