第1章 東卍の参謀
アタシが手を伸ばすと、ヒナちゃんは怖がって、それでも逃げずにその場でギュッと目を閉じた。
ホントにバカな子……
ガシッ
「!」
ヒナちゃんに向けたアタシの手を、タケミっちが掴んで止めた。
もう片方の手では、ドラケンの肩を掴んでる。
「あ?」
「その手を離せ…」
「何言ってんのか聞こえねーよ」
ドラケンが煽ると、タケミっちはキッと顔を上げた。
「その手ぇ離せって言ったんだよ‼︎バカ野郎‼︎」
「!」
ビックリ……ドラケンに向かって「バカ野郎」なんてよく口にできたね。
(今度のオレは、“ヒナの事守るよ”って約束したかんな!)
「テメー、誰に向かって口利いてんだ⁉︎」
ドラケンが凄みながら顔を近づけると、タケミっちは真っ直ぐドラケンを見返す。
「もう二度と、譲れねぇモンがあんだよ」
「は?二度と?」
譲れないモン、ねぇ……
アタシは、今まで無言でいたマイキーに目を向けた。
「マイキー、どうする?」
「……あーあ、折角ダチになれると思ったのに、ザンネン♡」
そう言ってマイキーは、「さて」とこちらに顔を向け、
「どうやって死にてぇ?」
タケミっちを睨み付けた。
そのプレッシャーに圧されて、タケミっちの頬を冷や汗が伝う。
「二度と人前に立てねぇーツラにしてやるよ」
近づいて来るマイキーを前に、タケミっちはそれでも強気に「一つだけ約束しろや」と声を張った。
「ん?」
「ヒナには、絶っ対ぇ手ぇ出すなよ‼︎」
「は?知らねーよ」
マイキーは冷たく返し、容赦なく拳を振り上げ……
「うっ」
「なーんてね」
ビビって目を閉じたタケミっちに、ニコッと笑いかけた。
「……へ?」
涙溜めて、鼻水垂らして、こんな情けない顔ある?ってくらい情けない顔して、タケミっちはこれまた情けない声を出す。
そんな彼の肩を、マイキーはバシバシと叩いた。
「バカだなー、タケミっち」
校舎の外に向かって歩いてくマイキーの後に、アタシも続く。
「女に手ぇ出すワケねーじゃん」
「アタシは半分本気だったケド」
アタシが手を伸ばしてマイキーの頬に触れると、マイキーは笑いながら「もう痛くねーから大丈夫」と言った。