第6章 決戦を越えて
アタシはニッと笑って、トントンと爪先で地面を突いた。
「アンタ達こそ、そんだけしか離れてなくていーの?10秒待ったげよっか?」
「「いらねーよ」」
アタシの挑発に、マイキーと場地は揃って言い返す。
その様子にアタシは、また笑って……
「じゃ、遠慮なく!」
二人に向かって走り出した。
アタシはまず、マイキーを狙って追いかける。
体力オバケのマイキーは後回しにするべきじゃないし、目を離すと木に登ったりし出して面倒臭いから。
幼い子供がする鬼ごっこなら、キャッキャッと可愛い会話や声を出しながら、追っかけて追っかけられてってなるハズなんだけど。
「くっ…!」
「………」
本気モードのマイキーとアタシの間に、送り合う言葉は一切無い。
真っしぐらにマイキーの背中を追うアタシを、マイキーが背中越しにチラ見する。
「ホントはっえぇな!」
マイキーはそう叫んで、逃げるコースに神社の外周を使い始めた。
フェイント混ぜて撒く作戦かな?……アタシは素直に追いかけるけど。
マイキーとアタシの距離が徐々に縮まる。
ここまで近づけば後は簡単……アタシは、マイキーの背中を捉えながら左手を前に出した。
これ以上距離縮められる事に危機感覚えたのか、マイキーが神社の外周から逸れようと動く。
「よっ!」
パシッ
「!あーっ‼︎」
アタシは目いっぱい手を伸ばして、マイキーの肩にタッチした。
「ハイ捕まえた!」
「くっそ!和月足速すぎ‼︎」
「下手くそなクセにフェイント使おうとするから捕まんのよ」
悔しがるマイキーに背を向けて、アタシは今度は場地を捕まえに走り出す。
どーせ林の中でしょと予想して向かうと、思った通り奥の方に場地の姿を見つけた。
「圭介みっけ!」
「来やがったな」
真っ直ぐ駆け向かうアタシをある程度まで引き付けてから、場地は地面を蹴るように走り出す。
アイツは反射神経が良いから、距離だけ詰めても中々捕まえらんないんだよね……マイキーよりも確実に追い詰めなきゃ。
木の位置、枝の高さ、茂みに至るまで感覚的に記憶してる場地は、幹使って方向を転換させたり姿勢低くして枝の下を抜けたりと自由に逃げ回った。