第6章 決戦を越えて
「……ねぇ」
「んー?」
アタシが声かけても、マイキーはアタシの頬をムニムニ弄るのをやめない。
「もーやえへ欲ひいんあけお」(もうやめて欲しいんだけど)
「あ?何言ってんのか聞こえねーよ」
アタシがマイキーの所為で話せないのを良い事に、場地も無遠慮にアタシの頭をワシャワシャ撫で続けた。
コ・イ・ツ・ら〜〜!
「もーやめてよ!何なのいったい⁉︎」
アタシはムカつくままバッと両手をあげて、マイキーと場地の手を振り解く。
すると意外にも、二人はすぐに手を引っ込めた。
「おっ!ユウがキレたぞマイキー」
「よーし!逃げんぞ場地!」
ダッ
クルッとアタシに背を向けて、マイキーと場地が駆け出した。
アタシはワケわかんないまま「はぁ⁉︎」と声を出して、二人を目で追う。
マイキーは神社から階段際まで離れたところで、こちらを振り向きニッと笑った。
まるで幼い子供みたいな、無邪気な笑顔で。
「和月が鬼な!」
「!は…?」
突然の事過ぎて、アタシはポカンとしてしまう。
「10分以内にオレと場地捕まえたら、オマエの勝ち。逃げ切ったら、オレ達の勝ち!──で、負けた方が勝った方にアイス奢る」
「バッ…テメッ、マイキー!ユウ相手に10分てバカか⁉︎5分にしとけよ」
「んだよ、場地。オマエ、和月相手にヒヨってンの?」
マイキーの煽りに、場地は「あ゙⁉︎」とキレた。
「んなワケねーだろが…上等だ!10分だろーが20分だろーが逃げ切ってやるよ」
「……アタシまだ、鬼ごっこやるなんて一言も言ってないんだケド」
アタシは、ボサボサになった髪を手櫛で整えながら、二人を見る。
“お疲れの日”ね……なんか思い出して来た。
「オラかかって来い、ユウ!」
「どーする?オマエが嫌ならやめてやってもいーけど」
「やっすい挑発だこと」
アタシはフッと軽く笑って、離れた位置にいるマイキーと場地を見据えた。
「オーケー、5分で捕まえてやるから」
「オレは10分逃げるつってんのに」
「5分でヨユー」
アタシの宣言に、マイキーと場地はピクリと反応する。