第6章 決戦を越えて
場地の腕が、アタシの背中に回る。
さっきまでアタシを全力で押さえてた男が、今は遠慮がちに手をこわごわさせてるってどーよ。
「……ケンが」
「ん?」
「ケンが刺された時、心配で死にそうになった……マイキーも不安だったハズなのに、励まさせちゃったのが、申し訳なかった」
アタシはポツポツと、心に溜まってた思いを吐き出した。
「パーちんの親友を嬲った実行犯共が、彼女をヤった時の話してきて、ホントに胸糞悪かった」
場地から舌打ちが鳴る。
「クソ……オレがその場に居りゃあ、この手でブッ殺してやったのによ」
アタシが「ちゃんとボコして通報しといたよ」と言うと、場地は「当然だ」と頷いた。
「ペーやんに、これから肩身狭い思いさせンのが嫌……だけど、アタシには何も出来なくて」
「ペーか……まぁ、心配すんのは仕方ねーけどな、アイツなら大丈夫だろ」
「折角、愛美愛主に勝ったのに、半間を逃した……アイツが何考えてンのか分かんなくて、気持ち悪くて、腹が立つ」
こうやって考えさせられてんのも、アイツの思惑通りな気がして、余計に腹立つ。
「あのヤロー、芭流覇羅とかいうチーム作ったとかふざけた事言ってやがったな」
アタシは、あの時半間が言っていた言葉を思い出した。
──「オレの目的は〝東卍潰し〟」
──「この先〝東卍〟に、平和はねぇぞ」
「……今すぐってワケじゃないと思うけど、芭流覇羅は必ず仕掛けてくる」
「参謀サマは心配事が多いな」
場地はそう言って笑いながら、またアタシの背中をポンポンと叩く。
「“誰かさん”に、参謀任されちゃったからね」
「!…ハハッ、そーだったな」
「……あーあ、こんな話するつもりなかったのに」
幼馴染への甘えかな?
「昔っからのクセでさ……圭介になら何でも話せる、って思っちゃってンだよね」
「それでいーんだよ。テメーはもっと周りを頼れ」
「うん……ありがとね、圭介」
アタシは場地の顔を見上げ、彼の目を見つめた。
「お陰で落ち着いた」
その時
ザッ
また、人の足音が聞こえた。
「──和月?」
「「‼︎」」
アタシの思考と身体が、ビシッと固まる。
顔を向けると、そこにはマイキーの姿があった。