第6章 決戦を越えて
アタシの顔を見つめた三途は、目を細めて微笑む。
「とてもキレイです」
「……やっぱ喧嘩売ってるでしょ」
その表情(カオ)が恍惚として見えるのは、彼が血に興奮してるからだろうか。
顔を傾ければ唇が触れてしまいそうな距離……三途はマスク付けてるけど、マイキーが見たらブチ切れる事必至だ。
「ハァー…わかった」
アタシは三途の手を掴んで頬から剥がし、諦めの溜息を吐く。
「後は伍番隊に任せる。くれぐれも殺さないように、ね」
「ハイ」
三途はニッコリと微笑みながら、また隊員達の中に戻って行った。
ゴッ ガッ ゴッ ゴ ゴッ
アタシはもう動くのが億劫で、その場に立ったまま、血腥い光景を見続ける。
ガッ ゴッ ゴ ゴッ ゴッ
ホントに殺しそうになったら止めなきゃな〜……と、ぼんやりとした頭で考えた。
◇◆◇◆
翌日───
アタシは一人で、武蔵神社を訪れた。
集会も何もない今日は、神社に来てる東卍メンバーの姿は一つもない。
アタシは神社の上にあがって、木の床の上にゴロンと寝転んだ。
「スー……ハー」
目を閉じて、深く呼吸する。
いつもなら昼寝したくなるのに、今日は少しも眠くならなかった。
胸が騒ついて、落ち着かない。
それを意識すると頭は冴えてきて、心臓の鼓動が早まる。
「……っ」
アタシは腕を上げて自分の胸に手を当てた。
落ち着け、落ち着け、落ち着け……
「……大丈夫……」
不安も、恐怖も、不快感も飲み込んで、自分に言い聞かせる。
その時
ザッ
人の足音が聞こえた。
神社(ここ)に近づいてくる足音……神社の人だったら怒られるな、とアタシは他人事のように考える。
動く気にはなれなくて、アタシは目を閉じたままじっとしてた。
ザッ
神社の前で足音が止まる。
「…………」
足音の主はギシ…と音を立てながら、神社の上にあがってきた。
昔からよく知ってる、馴染みある気配だった。
「オイ、起きろ」
「起きない」
「起きてンじゃねえか。んなトコで寝てたらバチ当たんゾ」
「土足で上がってるヤツがよく言うよ」
目ぇ閉じたまま返してたら、気配は更に近づいてきた。