第6章 決戦を越えて
「…フーッ」
詰まってた息を吐き出して、アタシはゆっくりと立ち上がった。
ゴッ ドス ゴ ドッ ゴッ
「あ゙…ああ゙」
「あ゙あ゙あ゙あ゙」
伍番隊によって制裁を加えられるヤツらの呻き声と、嫌に響く鈍い音に、アタシは立場も忘れて顔を顰めそうになる。
それをぐっと堪えながら、ナイフに付いた血を拭き取り、折り畳んでポッケに仕舞った。
「あ゙〜〜嫌な感触」
ナイフを強く握ってた手のひらは赤くなってる。
アタシは、残る感触を払うように、手をグッと握り込んではパッと開いてを繰り返した。
「………」
ドス ド ガス ドス ゴッ
裏切り者に次々と拳を振り、蹴りを入れる隊員達……アタシも、その中に加わろうと歩き出す。
「!……くっそ」
一歩目がフラついてしまった事に、自分で自分を情けなく思った。
「ユウさん」
三途がアタシの前に立ち、裏切り者共とアタシとを遮る。
血に興奮してるのか、切長の目はいつもより開かれていた。
「参謀としての“お務め”、ご苦労様です。後は伍番隊が引き受けます。ユウさんは休んでて下さい」
「こんな血に塗れた事、アンタ達だけにヤらせらんない」
「……女性には、キツいかと」
「は?……三途、アンタ喧嘩売ってンの?」
アタシは苛立つまま、三途を強く睨みつける。
ゴッ ドッ ゴッ ゴッ ゴス
見合うアタシと三途に構わず制裁は続き、鈍い音がビリビリと鼓膜を震わせていた。
ゴッ ゴッ ゴキ ゴッ ガッ
喧嘩中なら何とも思わないような音でも、一方的な暴力として聴くのではワケが違う。
「伍番隊に嫌な役ヤらせといて、参謀のアタシが休んでていーワケないでしょ」
アタシは再度歩き出し、三途の横を抜けてヤツらのトコに向かおうとした。
ガシッ
「いいえ」
三途が、アタシの腕を掴んで引き止める。
アタシが振り向いて睨むと、三途は一歩踏み込みアタシに顔を近づけた。
「……充分ですよ」
「は?」
甲にヤツらの返り血が付着してる手が、アタシの頬に優しく触れる。
「もう充分、ユウさんも血に塗れてます」
上を向かされたと思えば、アタシの額にコツと三途の額が合わさった。