第1章 東卍の参謀
「ごめん、ヒナ…今日立て込んでてさ」
タケミっちが、ヒナちゃんに向けて困ったように笑う。
けどヒナちゃんは、タケミっちではなくマイキーに向かっていて──
バチン!
「えっ」
何の躊躇いもなく、マイキーの頬に平手打ちを食らわせた。
(ヒナさぁん!!?なにやっちゃってくれてんの!!?)
「えぇー……」
いきなり何してんのこの子?
「えっと、大丈夫?マイキー」
可愛い女の子に思いっきり殴られて心に傷負ってないか心配してると、ヒナちゃんはアタシの横を抜けタケミっちの腕を掴んだ。
「タケミチ君、行こう!」
「え?」
ヒナちゃんは走るでもなく堂々と歩いて、タケミっちを連れて行く。
タケミっちは真っ青な顔で、ヒナちゃんに手を引かれるまま連れてかれてる。
「こんな人達の言いなりになっちゃダメだよ。ヒナが守ってあげる」
「!ヒナ……(手が震えてる)」
いやいやいやいや……
「ハイ、ストップ」
「!」
アタシは彼女の前に回り込み、両腕を横に伸ばして通せんぼした。
ガシッ
「オイ…殺すぞ、ガキ」
ドラケンが、こめかみに青筋浮かべながらヒナちゃんの腕を掴む。
「いきなりぶん殴ってハイ、サヨナラ?ふざけんなよコラ」
「いや〜、こんなバカな子、アタシも初めて見たワ」
アタシは笑いながら、自分の顔をヒナちゃんの可愛い顔にグッと近づけた。
「アタシの男を殴るなんて酷いじゃん。アタシも、タケミっちのこと殴っていーい?」
「………」
ヒナちゃんは表情を強張らせてるけど、目は逸らさずアタシを見返す。
「ふざけてるのは、どっちですか?」
「あ…?」
「他校に勝手に入って来て無理矢理連れ去るのは、友達のする事じゃありません」
手も声も震えてる……怖いくせに、アタシやドラケンに強気に言い返す。
「最近のタケミチ君、ケガばっかり……もし、それがアナタ達のせいなら、私が許しません」
「……許さなかったら何?それでどーなるって言うの?」
ちょっと大人げないかなーとは思いつつ、アタシは目を細めヒナちゃんを睨んだ。
「可愛い顔して、正論並べてりゃどうにかなるとでも思ってんの?良い機会だし……不良に喧嘩売ったらどんな目に遭うか、アタシが教えてあげるよ」